■不安になりやすい考え方を見直す

 一方、認知行動療法は薬を使わず、医療者との会話などを通して心(脳)に働きかける「心理療法」の一つだ。薬物療法とほぼ同等の効果があり、とくに社交不安症には薬物療法を上回る効果が報告されている。2016年からは健康保険で治療が受けられるようになった(※千葉大学病院の場合は自由診療)。千葉大学病院認知行動療法センター・センター長の清水栄司医師はこう話す。

「抗うつ薬が効かない場合も、認知行動療法で改善できる可能性が高い。抗うつ薬で症状が改善しなかった社交不安症患者を対象に実施した臨床試験でも、認知行動療法を加えると85・7%は症状が改善し、47・6%はほぼ症状がなくなったという結果が出ています。副作用の面で薬物療法をおこなうのが難しい子どもや妊婦さんにも、適した治療と言えるでしょう」

 たとえば社交不安症の人の場合、人前での自分の外見(イメージ)を常にネガティブに捉え、「きっと真っ赤になってうまく話せていない」「変な人だと思われたら、人生終わりだ」というように、最悪のことばかりを考えてしまっている。過去の失敗経験などから、うまくやれるとは考えられなくなってしまっているのだ。

 さらに最悪なことが起こるのを防ごうと、人と目を合わせることを避けて下を向いてしまうなど、安全のための行動をとろうとする。その結果、人と接する際の不安がますます大きくなり、ひどくなると引きこもるようになるなど、悪循環に陥ってしまう。

 認知行動療法では、さまざまな技法を使って、こうした「不安を生じさせているものの見方(認知)」や「行動パターンの偏り」に自ら気づき、バランスがとれた状態へと段階を踏みながら修正していく。

■ストレスに対処できる方法

 よく用いられる技法の一つが、「ビデオフィードバック」だ。動画撮影した自分の様子を客観的に観察し、思い込んでいる自分のイメージと比べてみる。「思ったほど顔は赤くなっていない(=実際は自分が考えていたような状態ではない)」などと現実を確認することで、自己イメージの偏り(思い込み)に気づくことができるという。

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