治療が進むと、「行動実験」がおこなわれる。人前でスピーチをするなど、実際に人とかかわる場面を経験し、相手の反応を見て、自分が予想した最悪な状況が起きるかどうかを検証するのだ。患者にとって勇気がいることだが、最初は家族の前で、次は友達の前で……というように少しずつハードルを上げる。何度も繰り返すことで、最悪の事態はそうそう起こらないことを実体験し、自信を深めていく。
「認知行動療法は手間も時間もかかります。しかしバランスの良い考え方や行動を身につける訓練なので、一度習得すればさまざまな場面で活用できます」(清水医師)
ストレスに対処できる方法を学んでいるので、再びストレスがかかったとしても不安症が再発しにくくなる。
また、不安症は違うタイプの不安症やうつ病を合併しやすいが、こうしたさまざまな精神疾患の発症を予防することにもつながるという。
「複雑な現代社会を生きていく上で、ストレス対処能力は、大きな力になってくれるはずです」(同)
(文・熊谷わこ)
※週刊朝日2021年8月20-27日号より