松井氏はファンへの直接のサービスも忘れなかった。
「必ずサインをしてくれた。自主トレは広報などもいない時があったから、待っているファンを自分で整理する。『はい、ここから真っ直ぐ!』と松井選手自身が号令をかけて1列に並ばせ全員にサインした。ある時はハイヤーの運転手に『すいません、1時間ほど待ってもらえますか』と声をかけてまでサインした。そういう姿勢を見ているから、誰もが黙って自分の順番を待っていた」(松井氏にサインをもらった巨人ファン)
マスコミだけでなく、ファンとも直接触れ合っていた。巨人時代のオフ期間はジャイアンツ球場で自主トレを行っていたが、ファンに必ずサインをしていたのは有名。「忙しいから」と言って断る選手もいる中、練習後の日課としてサインをしていた。毎日、足を運ぶファンもいたが「お前、また来たのか?ヒマだな?(笑)」と冗談を交えつつ、嫌な顔一つせず話しかけていた。
巨人、そしてヤンキースと日米の名門球団での大きな実績。どんな時も感情を露わにすることなく、穏やかに眼前の仕事に取り組む姿勢。黙々とバットを振り続け、努力によって身につけた実力……。松井氏は社会的模範であり続け、そしてファンへのサービス精神も常に忘れない国民的スーパースターだった。
先述の通り、引退後は公の場に姿を現す回数はめっきり減ったが、そのカリスマ性も含め間違いなく野球界に必要な人物であろう。今後も何らかの形で野球と関り、少しでもファンにその姿を見せて欲しい。