![『オチビサン』(10巻)から、夏のシーンを集めた。四季折々のすばらしさを感じられるのもオチビサンの魅力だ](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/5/0/535mw/img_506a3d0b2105e6b351b5582c9d428ed793667.jpg)
![『オチビサン』(10巻)から、夏のシーンを集めた](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/4/f/535mw/img_4fc07fb6ec695bc6cfd65bb6fe9a760973882.jpg)
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本誌に2019年末まで連載されていた「オチビサン」。このたび、その書籍の10巻が発行され、完結した。オチビサンを描いた日々、作者の安野モヨコさんはどんな思いだったのか。AERA 2021年8月16日-8月23日合併号に掲載された記事を紹介する。
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「オチビサン」の連載をしていたのは、(朝日新聞とAERAで)2007年から19年末までの12年間ですが、こうして振り返ってみると、思いのほか長かったなという感じです。これまで、いつもオチビサンがそばにいたので、今も道にちっちゃいキノコとかがはえているとオチビサンがそこをトコトコ歩いているような気がしたりしちゃうんです。そういう癖がまだちょっと残っているみたいです。でも、本当のところは、「オチビサンだ!」じゃなくて「ネタだ!」って感じなんですけどね(笑)。
オチビサン以前の私は、テンションが高めのマンガを多く描いていました。でも、それは元気がある人が読んでさらに元気になれるというようなものでした。そこで、日々に疲れていてマンガを読むことすらつらいような方でも、フワッと読めるようなものを描きたいと思っていたんです。
■もくもくと切り抜く
オチビサンはデジタル着彩ではなく手描きです。切り抜いた型紙を用いて着彩するポショワールという技法で作成しています。とにかく手間がかかりました。型紙は、もちろん自分でも切り抜けるんですが、ひとりでやると1枚に1週間くらいかかっちゃう。それではさすがに連載は間に合いません。そこで事務所の事務業務などをしていただいていた方々にも、「ちょっと切り抜いてみて」ってお願いしたりして。最初は「えー、無理です。できません」って言うんですけど、みんな普通にできちゃうんです(笑)。あらためて日本の人たちって潜在的に器用な人が多いんだなって思いました。
そうやって、もくもくとただただ切り抜く作業って癒やされるんですよね。きれいに切り抜かれた紙を見ると、達成感もある。マンガ家の仕事って、自分でうまく描けたと思っても読者からの反応が悪いこともありますし、結果がひとつじゃないんです。だけどオチビサンで用いた切り抜きという作業は、描いてある絵を切り抜いていくわけですから、終わったというゴールがハッキリしている。そうやって達成感を積み重ねるということが、非常に精神的にはいいものでした。そんな作業を12年間もさせてもらえていたこと自体が、幸せなことだと思っています。
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