今回の開催が、障害者への「一方的な捉え方」が是正される機会になれば、と期待する気持ちも大きいです。
例えば、過去最も成功したパラリンピックの大会と評価される2012年ロンドン大会。要因の一つは、それまではパラリンピックを「障害を克服してスポーツに打ち込む感動物語」と捉える向きが多かったところに、プロモーションの方法を工夫し、「純粋にスポーツとして面白い競技なんだ」という側面を強調したことでした。そう見方が変われば、国内大会のチケットが売れるようになったり、企業スポーツやプロスポーツに発展する可能性も出てきたりと、障害者スポーツの発展にもつながっていくと思います。
少し違った視点で見てみるのもいいかもしれません。私は「五輪とパラリンピックは一つの大会に」を提案し続けています。五輪では一つの大会の中で、さまざまな競技が「体重別」「男女別」などのカテゴリーに分けて行われています。それなのに、健常者と障害者だけは大会が分かれてしまう。「その必然性は何だろう?」と考えてみるのはどうでしょうか。
あるいは、今回の五輪ではスケートボードや自転車のBMXが新競技・種目になりましたが、「スケートボードや自転車という用具を使うスポーツをすると五輪なのに、なぜ車いすという用具を使うとパラリンピックなのか」。不思議だと思いませんか?
そんなことを皆が考えることで、「社会としてどう障害者をインクルード(包含)していくのか」という点でも有意義な議論になっていくと思うんです。
(構成/編集部・小長光哲郎)
※AERA 2021年8月30日号