東京パラリンピックが8月24日から13日間、コロナ下で開かれる。感染拡大が続いている中での大会をどう見るか。乙武洋匡さんが自身の見解を語った。AERA 2021年8月30日号の記事を紹介する。
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私はパラリンピックの自国開催を楽しみにしていたので、開催されることに安堵(あんど)の気持ちはあります。ただ、これだけ感染拡大が止まらない中、国際的な大イベントを開催することに果たしてどれだけの妥当性があるか。「五輪をやっているんだから自粛しなくていいよね」という、人々の行動変容に与えた影響は少なからずあったでしょう。決して「晴れ晴れとした気持ちで開催を喜べる」心境ではありません。
課題も多いと感じます。障害者の中には介助が必要で、常に他人と濃厚接触せざるを得ない人は多い。パラアスリートのバブル方式(選手団と一般の人の分離)の徹底は、「五輪のときより難しいのでは」という想定をしたほうがいいと思います。
また、パラアスリートには基礎疾患を持つ人も多くいます。コロナ感染のリスクはもちろんですが、例えば頸椎(けいつい)損傷や脊椎(せきつい)損傷の方などは体温調節機能が非常に弱く、この炎天下でスポーツをすること自体がリスクにもなってきます。
国立競技場に冷房設備がないなどの配慮のなさがまず問題ではありますが、そこのリスクはアスリート本人にしか判断できない部分もある。参加する/しない、もしくは「ベストパフォーマンスを発揮できないから時期をずらしてほしい」など、実現するかどうかは別として、そういった声を上げるのはアスリートの役目かなと思います。
■一方的な捉え方を是正
私自身はパラリンピックを「中止すべきだ」までの強い気持ちはありませんが、この状況下でそういった声は多くは聞こえてきませんでした。「中止を」と声を上げることで、「この人は障害者差別をしているのでは」と見られることを恐れる気持ちってあると思うんです。その恐れる気持ち自体が、障害者を特別視する気持ちに端を発してしまっているのかなと感じます。