1980年代から、ロックミュージシャンが登場しドタバタコメディーを繰り広げる漫画「8ビートギャグ」などの作品で知られるロック漫画家・シマあつこさん(64)は、
「ロックも、漫画の世界もそうですが、たとえばラップとか、新しいものが出てきたときに、中高年世代はどうしてもすぐ受け入れられないということはあると思います」
と語る。シマさんも、井寄さんと同じように、若者世代との感覚の違いは感じるという。
「私たちの世代にとって、思春期のうまく表現できないもどかしい気持ち、そんな現状を音楽で一発で打破してくれるような存在、それがロックでした。今の若い世代は、仕方ないといったあきらめに近い気持ち、浮いてしまってたたかれないかという安定志向があり、打破を求めない傾向を感じます。性別や年齢、環境、すべての既成概念を壊すものがロックという存在だと思ってきましたが、そのとらえかたも変わってきているのかなと思いますね」
しかし押し付けやマウントになることは、結果的に過去に反抗した大人たちと同じになっているのではと、シマさんは言う。
「いまや英語や音楽の教科書にロックの名曲が載る時代です。かつて社会や大人への反抗の象徴だったロックも、純粋に音楽として素晴らしいものととらえられるように変わった。若者に押し付けたり否定したりすることは、かつての大人世代と同じく頭が凝り固まっていると自覚するといいかもしれませんね」
自分たちは自分たちで中高年のロックライフを自由に楽しめばいいのではと、シマさんは言う。
「動けるうちに、好きなことを楽しんだほうがいいですからね。私たちが楽しそうにしている様子を見れば、興味を持って惹きつけられる若者はいるんじゃないでしょうか」
(本誌・太田サトル)
※週刊朝日 2021年9月3日号