MLBが協力的でないのは、五輪が開催される夏はレギュラーシーズン真っただ中であることを思えば当然と言えば当然。日本と韓国はプロ野球のシーズンを中断して五輪に選手を派遣したが、MLBとしては五輪にそこまで義理立てする魅力や意義を感じていないのだろう。五輪を重視しないこうした傾向は何も野球に限ったことではなく、五輪が最高峰の舞台ではない競技では年齢制限が設定されているサッカーや、ゴルフやテニスなど個人競技での欠場も含め、五輪をスルーするケースはよくある。
ただし全てのメジャーリーガーが五輪参加に興味を抱いていないわけではない。フィリーズの主砲ブライス・ハーパー外野手は、野球の世界的発展を志向しているMLBが4年に一度のたった2週間を五輪のために割かないのは理屈に合わないと持論を述べている。シーズン中断による経済的損失や五輪出場による故障リスクを負ってでもMLBは五輪に投資すべきという意見だ。
確かに野球にあまり興味のない層にアピールしようと思えば、五輪はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)やプレミア12とは比較にならないだろう。野球単独の大会であるWBCやプレミア12はそもそも野球に興味がなければテレビを付けもしないだろうが、五輪であれば「なにか面白そうな競技やってないかな?」と何気なくチャンネルをザッピングした人が野球に目を留める可能性が出てくる。
今回の東京五輪でもたまたまテレビでやっていた競技を見て「このスポーツは面白そうだぞ」と思った方は、けっこういるのではないだろうか。筆者の場合は自転車がそうだった。BMXでの素晴らしいトリックの数々に感嘆し、オムニアムという種目の存在を初めて知って奥深さにワクワクした。こうした効果が五輪では期待できるのがWBCなどとは大きく違うところだろう。
さて、冒頭で五輪での野球は今回の東京が最後になりそうだと書いたが、実は復活の最大のチャンスがまだ残されている。それはMLBのお膝元であるアメリカで開催される28年のロサンゼルス五輪だ。