しかし、その後も発熱が続き、月曜の夜間に酸素飽和度89~91%となった。飲食が難しく、医師が在宅酸素療法と補液を開始。同居していた母の不安が強く、夜中に救急車を呼んでいたが、どの病院も満床で入れない。入院出来たのは翌々日だった。現在、病院から保健所へのコロナ陽性の届け出は、複数の方法があるため滞りやすい。本件ではFAXを使用していたのかタイムリーに行われず、入院には時間を要した。

 だが、一番驚いたのは、保健所の職員が患者に対して「誰の指示で、勝手に訪問診療を使ったのだ」と語気強く言い放ったことだ。保健所は、感染症法に基づいて全ての陽性者を監視下に置かなければならないのはもっともだが、患者や家族は、なかなか医療につながらず不安が強かったはずだ。

 保健所の機能がパンクし、保健所を通した自宅療養者への在宅医療導入が難しいのであれば、保健所を通さずにできることも探さなければならない。看護師の活用を謳うのであれば、少なくとも、保健所が機能していない場面において、患者からのファーストコールが訪問看護であったなら、その要請に応えるため、訪問対応の事後報告を認めてもらいたい。

◯坂本 諒(さかもと・りょう)/看護師・保健師。看護師として総合病院3年、訪問看護2年7カ月の経験を経て起業。2019年より訪問看護ステーション「ビジナ」を運営。現在は東京都内と札幌市内で展開している

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