新型コロナ患者が増加し、入院できない自宅療養者が巷にあふれている。東京都内の自宅療養者数は8月下旬には2万人を超えたが、9月8日時点では1万2486人となっている。しかし、依然として訪問診療医のみでは対応できない状況で、東京都は訪問看護ステーションを含む全ての医療機関にコロナ患者を受け入れるように協力を依頼したが、現場は混乱している。
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8月中旬の土曜の夜間、勤務する職場の電話が鳴った。
「金曜にPCR陽性になった患者のパートナーです。病院では、保健所からの電話を待つように言われたのですが、いっこうに電話が来ず、保健所に電話をしてもつながりません。水曜から40度近くの高熱が続き、とても辛そうです。医療者に電話がつながっただけでも救われます」
女性はそう話した。
東京都における夜間休日のコロナ初診は、「ファストドクター」という民間の会社に委託されている。私は、ファストドクターの診察を提案しようと思い、サイトを確認した。しかし、混雑のため診察受付は全面停止。本来ならウェブサイトやLINE、電話での申し込みが可能だが、当日と翌日の日曜、日付が変わった月曜の深夜も停止していた。
■診てもらえるだけで…
ファストドクターの診療が機能しないのであれば、自分で動くしかない。そのため私は、訪問して状態をみることを約束した。併せて、訪問診療と酸素濃縮装置の手配を試みることを伝えた。直ぐに医療処置につなげられるかわからないことも説明したが、それでも女性は「何もできなくても、診てもらえるだけで救われます」と答えてくれた。
患者はワクチン未接種の30代男性。40度近い熱が出て4日目。酸素飽和度92~95%。軽い呼吸苦があり、食事は摂れていない。スポーツドリンクを1日2リットル飲んでいた。訪問診療は、普段連携している医師が快く引き受けてくれた。当日中に診察があり、明らかな肺炎兆候は無く、解熱剤にて対症療法を行った。