保坂:自民党はこの9年間、国政選挙は全部勝ってきましたが、その結果、失ってきたものが非常に大きいと思います。庶民や現場の声をしっかりくみ上げて、時に執行部の動きに待ったをかけるような声が皆無の状態になりました。
また、霞が関との関係も「報復人事」が平気で言われる時期が続いています。そうした上意下達の政治の結果が「アベノマスク」や「Go Toキャンペーン」、五輪開催をめぐる迷走に表れていると思います。
■一部の既得権益にお金
──コロナ対策より五輪が優先されていく政治も、安倍・菅政治の立ち位置と関連しているのでしょうか。
中島:「祝賀資本主義」は、「新自由主義的」で「パターナル」な政治と非常にマッチしています。祝賀ムードは、みんなの感覚がまひするなかで、通常では考えられないような予算が不透明なプロセスでつけられて、追及もされない。そして、政府のまわりに群がっている一部の既得権益にお金が落ちる。それゆえにコロナがあっても五輪をやめられなかったのです。
──自民党に代わる受け皿が問われています。コロナ禍では小池百合子・東京都知事や吉村洋文・大阪府知事の言動が注目されてきました。
保坂:国よりは現場に近いのですが、一貫して社会行動抑制のお願い系の話が多いですね。小池氏はPCR検査やワクチン接種も基礎自治体任せで対策が細切れ。戦略性を持っていない点では、国といい勝負です。
中島:小池、吉村両氏は安倍・菅政治と同じ(4)のゾーンの人たちです。自民党政治の補完にしかなりません。
前回の2017年の衆院選で、小池氏が結党した「希望の党」がなぜ失敗したか。小池氏が「排除の論理」を言った後に駄目になったと記憶されていますが、時系列は違います。
(2)の政治を目指していた民進党(旧民主党)が、明らかに(4)の政治である小池氏と合流すると言った瞬間にネット上では「選択肢がなくなる」と戸惑いの声が広がりました。「選択肢を作ってほしい」という声が「#枝野立て」という形で表れ、それに応じた枝野幸男氏が「立憲民主党はあなたです」と言ったから、立憲が勢いづき、希望が失速したのです。