「ベンチャー企業の経営者たちに話を聞くと、その分野では優秀だが、お金の勘定や営業に疎い人がいっぱいいます。IT企業では、システムには詳しいが、そのシステムを採用する業界がわかってない会社もあります。付き合いを広くして高くアンテナを張っていれば、そんなところから誘いの声がかかる可能性が出てきます」(大江氏)
「転職」を視野に入れるのが大江氏の持論だが、今の会社で働く道はどうか。先に触れた法律で努力義務となった「70歳までの就業機会確保」である。
定年後研究所の池口武志所長によると、4月から現実に法律が施行されると企業の態度に変化が出てきているという。
「まだ様子見が多いが、大手企業で前向きに考えていこうとするところが出始めています」
今春開かれたセミナーで行った人事担当者へのアンケート調査では、「他社動向を注視」が半数近くを占めたものの、70歳までの就業機会の確保を「すでに実施」と回答したのが10%、「具体案を検討中」も22%あった。約3分の1が「具体案」まで進んでいるのだ。
さらに、その具体案の中身を尋ねると、「再雇用」が半数強、次いでともに約2割で「業務委託」と「定年延長」が続いた。「業務委託」は今回の法改正で加わった就業確保策の一つで、具体的な仕事を指定して契約で請け負わせる方式だ。
「アンケートとは別に約30社の人事にヒアリングも行いましたが、そこでも業務委託検討の声を複数聞きました。すでに実際の社員を使って実験している企業もありました」(池口所長)
うまく仕事を切り分けできれば、該当社員の得意分野に仕事を割り振るなどで業務委託は十分成り立つ。池口所長によると、65歳以降は社員ごとに健康状態に差が出てくるため、再雇用で「週3日制」や「1日5時間コース」などの新設を検討する企業もあるという。
業務委託もそうだが、近いうちに今の会社でもチョイ働き(B‐1、C‐1)ができる時代が来るかもしれない。