西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回は「呼吸と呼吸法」。

帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長

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【意識的】ポイント
(1)意識的に行う呼吸法が無意識の呼吸に影響を与える
(2)お釈迦さんも呼吸法で体を回復させ悟りにいたった
(3)呼吸法により自分が生きていることを実感できる

 広辞苑で「呼吸」と「呼吸法」を引いてみました。すると、「呼吸」はもちろん記載されているのですが、「呼吸法」という項目はないのです。呼吸法はまだ世の中に認知されていないのでしょうか。

 呼吸は生きていくために不可欠なものです。そして同じように呼吸法も養生にとっては不可欠なものです。一方で、呼吸と呼吸法は大きく異なるところがあります。それは、呼吸は通常、無意識に行われ、呼吸法は意識的に行うものだというところです。

 人間が無意識に行っている動きはいくつもあります。一番大事なのは、心臓の鼓動でしょうか。心臓を自分の意思で動かすことは至難の業です。消化器の動きというものも、意識されません。食べ物を意識的に扱えるのは、口の中までで、あとはお任せなのです。

 では呼吸はどうかというと、通常は無意識です。人は1日に約2万回呼吸しますから、これを意識的にやろうとしたら大変なことになります。一方で呼吸は意識的に行うこともできるのです。これが養生にとっては、とても重要なポイントとなります。つまり、意識的に行う呼吸法によって、無意識に行われている呼吸に影響を与えることができるのです。

 実は心臓の鼓動も消化器の動きも、意識的にコントロールすることができます。瞑想などの方法で心の状態を変化させて、無意識的な体の動きにも影響を与えることができるからです。

 呼吸法の起源はお釈迦さんのアナパーナ・サチまでさかのぼることができます。難行苦行でぼろぼろになった体を立て直すために行った呼吸法です。私の呼吸法の恩師、村木弘昌先生の著書『万病を癒す丹田呼吸法』(春秋社)にこうあります。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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