高市早苗氏(c)朝日新聞社
高市早苗氏(c)朝日新聞社
この記事の写真をすべて見る

 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、自民党総裁選と女性政治家について。

【写真】マドンナ旋風といえばこの人

*  *  *
 3連休中、テレビは自民党総裁選のニュース一色だった。この選挙に勝つ人がこの国の総理になるとはいえ、今やるべきニュースは他にあるはず。コロナ対策についても、4人のうち誰ひとり他の国で当たり前のように行われている無料のPCR検査については触れず、Go Toキャンペーンや東京五輪・パラリンピックの強行を反省する姿勢もない。そうこうしているうちに、沖縄は今、世界最悪の感染地域になってしまった。

 もしこの総裁選がコロナ以前だったら。もし第二次安倍政権の誕生以前の日本だったら、自民党総裁選に女性候補が2人出たことを私は「うれしい」と思えただろうか。時代は変わった! と希望を持てただろうか。「自民党の多様性を示すために立候補した」と明言する野田聖子さんのキッパリしたスピーチを聞きながら想像をしてみるが、今は、とてもじゃないが、そんな気にならない。野田さんの背後にぴったり寄り添う、「八紘一宇」発言の三原じゅん子さんの姿を見ながら、多様性とは両極端の意見の人が同じグループで仲良くすることではないのにな、としらけた気持ちばかりが募る。

 そもそも高市さんにしても、野田さんにしても、国のトップに立つ女性のイメージがアップデートされていないことにも驚かされる。高市さんは、「鉄の女」と呼ばれたサッチャー首相を理想としている。野田さんは特定の人をあげてはいないが、「他の3人と比べて私の強み、差別化」の一つに「私は母であります」と語っていた。現役の女性政治家が母になることが長い間許されなかった日本社会で、「母である」女性政治家はそれだけで意味のあることなのかもしれないが、鉄の女か、母なる女かの二択は随分な選択肢だ、というかここはほんとうに2021年なのか?

  世界には今、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相や、フィンランドのサンナ・マリン首相など、鉄の女ぶらなくても、母アピールをしなくても、自分のまま、女のまま、個のままで国民に支持され、信頼されるリーダーがいる。そんな時代を生きる国が、日本の外にはあるのだ。なぜ80年代のイギリスに遡らなければいけないのか。

次のページ
野田さんは母であると同時に鉄