自宅で最期まで過ごすことを考えるなら、「在宅療養支援診療所」として地方厚生局から認可されている診療所に依頼することが望ましい。在宅療養支援診療所は2006年から始まった制度で、24時間態勢で対応することなど一定の施設条件を満たした診療所を指す。つまり、何かがあったら24時間連絡を取ることができ、必要なら往診できる体制を取っているのが在宅療養支援診療所だ。それ以外の診療所では、24時間対応が必須ではないため、診療時間以外に具合が悪くなっても、電話で相談したり診てもらったりすることができない。『幸せに死ぬために~人生を豊かにする「早期緩和ケア」』などの著書で知られ、都内の在宅療養支援診療所での勤務経験がある緩和ケア専門クリニック院長の大津秀一医師は言う。

「在宅療養支援診療所は、質、量ともに地域差がかなりあります。自分の最期に、どんな人が関わるかはとても重要なこと。まずは自分が住む地域に、在宅療養支援診療所がどれぐらいあるのか、どういった経歴の先生がいるのか、どんな在宅療養が実現できるのかについて調べてみる。在宅療養を望むなら、こうしたことを早いうちから知っておくことは、家族にとっても自分にとっても安心材料になるはずです」

 また、在宅療養において、もう一つの柱となるのが訪問看護だ。訪問看護師は、医師の指示のもと行う医療処置に始まり、生活全般におけるケアや相談など、在宅療養における暮らし全体をみるプロとも言える。こちらも24時間態勢の訪問看護ステーションに依頼すれば、緊急時にも駆けつけてもらえる。

「在宅療養がスタートしても、病院での検査や治療が必要な場合や、入院を希望した場合など、状況に応じて在宅医から地域の病院と連携を取り、受診してもらうこともできます。だから何かあれば、いつでも入院できるという心算で在宅療養に臨めばいい。その安心感をもとに、最期まで家で過ごすこともできる」(桜井院長)

(フリーランス記者・松岡かすみ)

週刊朝日  2021年10月8日号より抜粋

▼▼▼AERA最新号はこちら▼▼▼