各行冒頭の1文字と最終行の数文字をL字に読むと現れるのは、「19年の歴史に幕…思いは新球場へ」というメッセージ。文中には、北海道移転後の歴代の監督4人の名前も盛り込んだ。同社の野球中継担当ディレクターとファイターズの番記者を兼ねる西島剛司さんが担当した。
実はHBCでは、2010年ごろからスポーツ中継の番組表に縦読みなどの仕掛けを盛り込んでいる。「クマ出没注意」など時事ネタと絡めたメッセージも多い。西島さんは一昨年から野球中継の番組表執筆を担うようになり、今年は8試合を担当、そのすべてで縦読みを入れた。
「HBCの野球中継では番組表を使った話題作りが代々受け継がれていて下手なものはつくれないというプレッシャーもありますが、少しでも楽しんでもらえたらと作成しています。ドーム最終戦はファンにとって大きな日で、私も19年間の感謝を伝えたかった。ただの縦読みで終わるわけにはいかないと思い、頭を悩ませました」(西島さん)
■読者の反応を励みに
当然、番組の魅力が伝わることが大前提。2週間ほど前から盛り込みたいメッセージを考え始め、締め切り直前になると辞書を片手に頭をひねるという。
「ただ、1週間以上前では選手の調子もわからないし、準備できることは限られます。直前に何とかひねり出していますね。自分で『会心のでき』と思ったことはなくて、いつも意味が通じるだろうかと心配しています」
それでも、HBCの番組表を楽しみにしている読者は少なくない。SNSなどで道外の人にも広く拡散されることもある。番組表づくりは決してメインの業務ではないが、その反応がモチベーションにもなるという。
もちろん、縦読みなどが隠される番組はごくわずか。それでも、何げなく眺めるだけの番組表に目を留めてみると、思わぬ何かが隠れているかもしれない。(編集部・川口穣)
※AERA 2022年11月21日号