岸内閣の記念撮影の様子(C)朝日新聞社
岸内閣の記念撮影の様子(C)朝日新聞社

 11年に細田派を退会した高市氏を安倍氏が総裁候補に指名したことに、細田派内では反発がある。その亀裂に岸田氏は手を突っ込んだのだ。前出の自民議員は、「安倍氏は衆院選後、細田派に戻って派閥の長となり、高市氏を同派の次期首相候補にすると言われているが、それを阻止したい人も多い」と話す。

 安倍氏の権勢を削ぐには、細田派内に安倍氏の影響を受けない総裁候補をつくるのが近道ということだ。

 では、「独自色」に欠かせない岸田氏自身の人脈はどんなものか。カギを握るのが、出身校である開成高校のOBたちだ。

 開成は東大合格者数40年連続全国1位の超進学校だが、意外にも同校出身の首相は初。永田町には、開成出身の国会議員と官僚でつくられた「永霞会」という組織があり、悲願は「開成OBから総理を」だった。会長は岸田氏だ。同会事務局長を務める井上信治衆院議員が言う。

「永霞会は同窓会のような組織でOB同士の親睦が中心。現在は国会議員9人、各省庁の国家公務員を中心に約600人が会員になっています」

 上下関係が厳しく「質実剛健」をモットーとする開成は、政治家よりも官僚を目指すOBが多い。だからこそ、政治家として開成OBであることに大きなメリットがあるという。井上氏は続ける。

「私も役所にいる開成OBの知人に協力してもらうことはよくあります。永霞会とは関係ありませんが、渡辺恒雄さん(読売新聞グループ本社代表取締役主筆)も開成の大先輩で、これまでもOBの国会議員を集めて戦後政治のお話を聞かせていただいたことがあった。開成のつながりは大きな財産です」

 その開成人脈が早くも動いている。政権運営の陰の司令塔となる首相秘書官には、開成OBの嶋田隆・元経産事務次官が起用される方向。また、やはり開成OBで元警察官僚の北村滋・前国家安全保障局長を官房副長官に起用する案も一時は検討された。北村氏といえば安倍政権で内閣情報官を務め「官邸のアイヒマン」と呼ばれた人物。またも安倍氏と近い人物が……とも思えるが、『官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪』などの著書があるノンフィクション作家の森功氏はこう話した。

次のページ
岸田氏が頼っているのは安倍氏より麻生氏?