「北村氏は安倍氏が送り込んだというより、開成高で岸田氏の1学年先輩でもともと仲がいい間柄で、ブレーン的存在。ただ、『安倍傀儡』と見られるのを避けるため、今回は官邸入りすることはなさそうです。永霞会を取りまとめている武藤敏郎・元財務事務次官や、丹呉泰健・JT会長らも『岸田推し』でまとまっています」

 実際、10月4日には北村氏ではなく、栗生俊一元警察庁長官が官房副長官に内定したと報じられた。

 岸田政権に対する安倍氏の影響力について、森氏はこう見る。

「岸田氏には安倍氏の傀儡と見られたくはないという思いがある。むしろ頼っているのは麻生氏です。麻生氏も宏池会の流れを汲むので、気脈は通じているようです」

 前出の政治ジャーナリスト・野上氏が解説する。

「中曽根康弘氏が1982年に田中支配の中で政権を取った時も“田中曽根内閣”と揶揄されたものでした。田中角栄氏の影響下にある内閣という意味ですが、角栄氏がロッキード事件で失脚したこともあり、中曽根氏はしだいに自前政権へと舵を切っていきました。キングメーカーの安倍氏もモリ・カケ・サクラの“爆弾”を抱えています。岸田氏も急な安倍離れは無理としても、権力のトップに就いたのですから、徐々に自分のカラーを出していくべきです。安定した堅実な政治家に変身、国民の信頼感を取り戻すチャンスはあり得ます。たとえ3Aといえども、総理大臣をないがしろにはできないのですから」

(本誌・亀井洋志、西岡千史)

※週刊朝日10月15日号に加筆