第100代首相に就任した岸田文雄氏。「安倍傀儡色」が濃厚な人事に早くも“ガッカリ”の声があがっているが、よく見るとそこには「安倍外し」の萌芽が……岸田氏は独自色を出していけるのか──。
怒りを覚えた人も多いのではないか。岸田文雄新総裁が10月1日に選んだ自民党新執行部の顔触れは「安倍カラー」が濃い布陣となった。清新さはなく、スキャンダル議員も居並んでいる。
安倍・菅政権で8年9カ月にわたり副総理兼財務相を務めた麻生太郎氏(麻生派)を、副総裁に起用。安倍晋三氏と近いことで知られる甘利明氏(麻生派)は幹事長に就いた。2016年に「政治とカネ」の問題で経済再生担当相を辞任したが、岸田選対の顧問を務めたことで表舞台に復帰したかたちだ。政調会長には、総裁選で安倍氏の全面支援を受けた高市早苗氏(無派閥)が就任。国対委員長の高木毅氏(細田派)は、過去に女性宅から下着を盗み逮捕された疑惑が報じられた。政治ジャーナリストの野上忠興氏が指摘する。
「新政権へのご祝儀相場に水を差した布陣と言えます。昨年9月の菅政権発足時では、内閣支持率が約70%にまでなりました。内閣支持率が上がれば、連動して自民党の支持率も上がるものです。岸田政権も、まずは人事で無難な船出をして、衆院選に弾みをつけるべきでしたが、今回の党役員の顔触れを見ると、スタートから減点です。国民の岸田自民党を見る目が厳しくなり、衆院選にも影を落とすことになるのではないでしょうか」
ただでさえ“地味キャラ”な岸田首相。今やキングメーカーとして君臨する安倍氏が政権の命運を握るようでは、それこそ傀儡でしかない。政治学者の白井聡氏がこう語る。
「人事には安倍氏の影響が強く表れるとは思っていましたが、予想以上にひどい。岸田氏がなぜ、ここまで安倍氏にひれ伏すのか理解できません。総裁選では、岸田氏はかなり壮絶に闘って勝利を収めています。二階俊博氏を狙い撃ちすることで菅義偉前首相を不出馬に追い込み、乱戦のきっかけをつくった。そこへ河野太郎氏が参戦して本命視された。頼みの安倍氏は高市氏推し。当初は河野氏を総裁にさせないための当て馬とも見られていましたが、結局、安倍氏はかなり真剣に高市氏を応援しました」