■おやつの持ち込みOK
「初代女流名人」として18年の引退まで活躍してきた蛸島彰子さん(75)はこう話す。
「おやつが出るのはタイトル戦。私も何度かいただいたことがありますが、午後3時は対局がちょうどクライマックスになっていることも多い時間です。緊張もクライマックスで、何を食べたのかほとんど覚えていないのです。今の棋士たちがリラックスしておやつを楽しんでいるのを見ると、うらやましいくらいです」
一方、おやつの提供のない対局では、バッグにチョコレートやキャンディーを忍ばせることも多かったという。日本将棋連盟によれば、対局中のおやつにルールはなく、蛸島さんのように、好きなおやつを持ち込むのも、もちろんOK。また、提供されるおやつがあれば、ラインアップのなかから何を何個選んでもいいそうだ。
「対局中は頭を使って、ふらふらになることも。そういうときには脳が糖分をほしがるので、おやつで補給するんですね」
そう話す蛸島さんは引退後、将棋教室を主宰。ここでも生徒たちのリフレッシュや脳への栄養補給のために、必ずおやつの時間を設けて“もぐもぐタイム”を楽しんでいるという。
と、書いているうちに自分の頭はスイーツのことでいっぱいに。電話予約の後、近所の不二家に走り、コロコロしばちゃんとコロコロくまさんを買ってきた。クリーミーなカップケーキで、あっというまに両方ペロリ。ただし棋士の方々ほど頭は使っていない自分の場合、すべて脂肪に変わる懸念が……。(ライター・福光恵)
※AERA 2021年10月11日号