炎柱・煉獄杏寿郎(画像は「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」公式パンフレットより)
炎柱・煉獄杏寿郎(画像は「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」公式パンフレットより)

【※ネタバレ注意】以下の内容には、映画、今後放映予定のアニメ、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。

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 10日、『鬼滅の刃』のアニメ版・無限列車編の放送が始まった。第1話はアニメ版完全オリジナルの「炎柱・煉獄杏寿郎」だった。「無限列車」の調査に向かった煉獄は、列車と沿線の被害情報調査中に、「切り裂き魔」による恐ろしい事件を聞きつけた。煉獄は無限列車乗車前に「切り裂き魔」と対決するが、そこでは、かつて「父が助けた人物」との出会いがあった。父と同じ刀さばき、父と同じ呼吸法…助けられた人物が煉獄と父を見間違うほど似ていた「仕草」には、複雑な“父子の思い”が刻まれていた。

■無限列車と周辺被害

 炎柱・煉獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう)は、鬼殺隊(きさつたい)の任務として、「無限列車」およびその沿線で起きている、事件の調査に向かっていた。40人もの人々が、突如として姿を消すその事件は「神隠し(かみかくし)」と呼ばれ、捜索を行っても彼らの消息は依然として不明のままだった。さらに沿線では「切り裂き魔」と呼ばれる謎の犯人による被害が相次いでいた。

 物語の冒頭には、列車内での残酷な被害状況が映し出され、多くの行方不明者の張り紙、にぎやかさを失った街角の様子が描かれている。おいしい料理を提供しながらも、事件の影響を受けて、客足が途絶えがちになった蕎麦屋、経営が難しくなった駅弁屋の困窮……そんな人々の暗い気持ちに、煉獄は心を痛める。

■アニメ版での煉獄杏寿郎

「炎柱(えんばしら)!」

 鬼殺隊の一般隊士から、煉獄杏寿郎はこのように呼びかけられていた。別の場面では、隊士の1人から「煉獄様」と呼ばれ、伝令役のカラスからは「杏寿郎様」と声をかけられている。鬼殺隊の実力者「柱」として、皆の尊敬を一心に集めている人物。そんな描写がアニメのところどころで見受けられる。

 原作では煉獄の底なしの強さが、「特異な人柄」として示されていた。他人の話をゆっくり聞かない様子、判断が早すぎるあまりに周囲のリアクションを受け流す態度、そしてどこを見ているのかわかりづらい「視線」。これらのつかみどころのない人物像が、原作での煉獄の特徴だった。

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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「やはりお前は不愉快だ」