つまり、大手塾では一人ひとりに目をかけられない、ということなのか。

「クラスの人数にもよるので、一概には言えません。私の経験上、大手塾でも学校別の特訓講座などでは、あの漫画のシーンのように先生同士で話し合うことも多かったです。 学校別特訓講座には、どうにかしてその学校に合格させようというノウハウと気運があります。あとはやはり、全く塾に顔を出さず、電話もしない親御さんより、しっかり相談したいことを伝えてくれる親御さんだと『気にかけよう』と言う気にはなりますよね。一方、単に文句ばかりを言うモンスターペアレントになってしまうと、全くの逆効果です」

 親のスタンスとしては塾とどう接すればいいのだろうか。

「大手塾であれ、中小の塾であれ、理想郷のような塾はありません。通っている塾に、子どものことを真剣に考えてくれる先生が一人でもいればラッキーと考えたほうがいいでしょう。そして塾はあくまで勉強のスキルを享受する場、と割り切っておくことです。そこに子どもの人間的成長まで求めてはダメだと思います。塾の講師をやっていた経験から言わせていただくと、学校の先生もそうですが、先生業ってサポートにキリがないんです。どこかで線引きしないと先生自身の生活も破綻しかねない。時間度外視で教材を作ったり、子どもの指導をしたりしている先生もいますが、そこまでできるのは若い先生や独身の先生が多かったです。“お金を払っているのはこちらなんだから”と塾に何から何まで要求するのではなく、120%丸投げするのでもなく、適切な付き合い方をして欲しいですね」

 最後に、受験を控えた6年生の親へのメッセージを聞いた。

「塾講師も私たち家庭教師もどんなに頑張っても親御さんの役割はできません。勉強や家事はアウトソーシングできても、親の愛情はアウトソーソングできない。6年生の親御さんは特にこれから本番までメンタルが不安定になりがちです。親の不安や緊張は子どもに敏感に伝わります。ぜひご自身のストレスは子どもにぶつけず、上手に発散する方法を見つけてください。子どもは入試直前まで伸びる力を持っています。それを最大限に伸ばすために大切なのはメンタル管理。家の中がギスギスしないよう、安心・安全な場づくりをぜひ心がけてください」

 (教育エディター・江口祐子)

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