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『週刊ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で連載され、16日にドラマが始まった「二月の勝者―絶対合格の教室―」。塾業界の裏側や、親子の葛藤をリアルに描いていて、我が子が中学受験をする親からは「涙なくして読めない」という声も。実際に子どもや親たちと接している中学受験のプロはどう読んだのだろうか?関西・関東の大手進学塾で算数を指導した後、プロ家庭教師として多くの受験生親子を見てきている中学受験専門カウンセラー・算数教育家の安浪京子さんにお話を伺った。

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 コミックは一通り読んだという安浪さん。拝金主義的な塾業界、親のエゴといったところに注目が集まりがちだが、安浪さんが注目したのは、子どもの心理の描写のうまさだという。 

「夏期合宿で複数の校舎の子どもたちが集まり、刺激を受け合う様子が描かれていましたが、確かに『今まで見なかったすごい子』を目の当たりにして闘志に火がつく子はいます。これは親や先生にできることではないんですね。あと、女子たちが友人関係のいざこざによって成績が上下してしまうところも大きくうなずきました。思春期の女子のメンタルってすごく繊細なんです」(安浪さん、以下同)

 漫画では様々な家庭が出てくるが、実際にはどうなのだろうか。

「本物の葛藤が描かれているな、と思いました。まだお子さんが小さいご家庭や中学受験を経験されていないご家庭だと『たかが中学受験でこんなふうになる?』と思われるかもしれませんが、本当に様々なご家庭があります。事実は小説より奇なり、です」

 以前は大手塾で教えていたという安浪さん。塾講師の立場からはどう見たのだろうか。

「漫画に出てくる先生たちは、皆それぞれの立場で子どものことを考えてくれていますが、あれを子どもが通う塾にも期待してしまうのは危険ですね。実際には淡々と問題を解かせて解説して終わり、という授業をしている先生が多く、漫画のように一人ひとりに深くコミットしてくれる先生は少数派だと多います。例えば、漫画では先生たちが机を囲んで子ども一人ひとりの状況を共有していくシーンが出てきますが、あれは大手塾ではなかなかできないことです。複数の校舎を掛け持ちしている先生も多いですし、知識や経験のないアルバイトの先生も少なくありません」

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「理想郷のような塾はありません」