衆院選で共闘による岸田文雄政権の打倒を目指す野党。だが、共産党について否定的な見方を持つ連合や有権者もおり、一筋縄ではいかない。どう戦えばいいのか。AERA 2021年10月18日号で、ジャーナリスト・池上彰さんと政治学者・山口二郎さんが語り合った。
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──立憲民主党が政権を取った場合、共産党と「限定的な閣外からの協力」で一致しましたが、立憲の枝野幸男代表が野党共闘にいまひとつはっきりしない態度なのも気がかりです。
山口:野党共闘はよく「ガラス細工」と言われていて、私もそれを否定しません。共産党について極めて否定的な見方を持っている連合から応援してもらいながら、共産党とも選挙協力していくというのは、本来矛盾をはらんでいる話です。ただ、理念や世界観のまったく違う政党が選挙のためだけに無理やりくっついたわけではありません。安倍・菅政権の下でも、野党は国会のなかで協力して議員立法を作っています。
池上:地方に行くほど、「結局共産党は何をやろうとしているの?」という人たちの信頼感をどこまで得られるかが重要になるでしょうね。たとえば、共産党は自分たちのしてきたことを正しかったと言い続けています。でも、「これとこれは間違いだった」「ごめんなさい、生まれ変わったんです」というくらいのことが起きると、変わるのかもしれません。いまだに前衛党神話みたいなものを持ち続けていることにも、抵抗感があるのだと思います。
山口:「究極的な理想」と「短期的に実現すべき政策」を区別して、「短期的なスパンでいえば社会民主主義政党です」と言ってくれれば話は簡単ですけど。
■投票率が上がれば変化
──共産党にネガティブなイメージを持つ人たちがいるなかで、無党派層の票田を逃す可能性はありませんか。
山口:共産党と協力すれば、「革命を目指す左翼政党と一緒にやるのか」という批判が必ず出てきます。でも、もう逃げ隠れする必要はない。「政策実現のために、共産党とも必要な限り協力します」と言っておけばいい。そもそも、共産党にそういった意識を持つ人たちは、野党に投票してくれません。小選挙区で二者択一の構造を作ると、45%くらいを取れば勝てるわけです。政治はダイナミックに動く。政治的関心を持つ人々がどれくらい共産党に票を入れるかということが、野党協力の持続可能性にとって重要な課題になってくると思います。