そして、YouTuberやインフルエンサーが忘れてはならないのが、「ご協力していただくおかげで、動画にすることができる」という自分の立場です。なぜか「撮影してやっている」「宣伝してあげている」という姿勢でいる人々もいますが、立場が全くの逆です。取材や撮影に協力してもらわなければ、インフルエンサーはコンテンツを投稿できません。飲食店の動画であれば、飲食店の方々のおかげで動画を作ることができるのです。この点を忘れずに、撮影の許可や取材の依頼をすべきです。そしてルールを確認すべきです。
周りの人々の写り込みについては、よほどフォーカスしていたり個人情報や社会的地位を下げるような映り方等をしていなければ、モザイク等をかける義務は、実はありません。通行人や写り込んだ人々にモザイクをかけるのは、トラブルを避けるためのリスクヘッジです。YouTuberの動画の背景に不倫中のカップルが写りこんでおり、そのカップルの女性からクレームが来た案件がありました。わざと載せたわけではなく、当人以外には分かり得ない事情であるため、ただ写り込んだだけでは肖像権は侵害していません。写り込みによる予想外のトラブルを避けるためのモザイク処理です。
以上の点を踏まえた上で、YouTuberやインフルエンサーを上手に利用するとメリットもあります。「撮影NG」「インターネットやSNSへの投稿禁止」「取材お断り」という施設もありますが、「昔からのルールだから」「よくわからないから」という理由だけで断るのは、非常にもったいないことです。ある自治体は、「いかなる事情であっても、市の運営する施設での営利目的の撮影は禁止」というルールがあるために、体育館や水族館などの施設での撮影ができません。多くのチャンスを逃しているとも言えます。今後も、インフルエンサーの数は増加します。おそらく撮影や取材の問い合わせをする人々も増えます。彼らを断るのも、利用するのも、施設の方々の自由です。いずれにせよ、インフルエンサーは「取材させていただく」立場であるという自覚が重要です。