―――マスメディアの記者やジャーナリストには、何を期待しますか。

 私は10年前に朝日新聞を早期退職し、フリーになってはじめてわかったんですが、以前は、本来「会社は」と語るべきところを無意識のうちに、「マスコミは」とか「ジャーナリストは」という主語に置き換えていたことに気づきました。「マスコミはこういうものに屈してはいけない」というのは組織防衛で、「ジャーナリストは24時間働かないといけない」というのは、会社に忠誠を尽くすというのを言い換えているだけに過ぎませんでした。だから「私は」という主語で語らないといけない。私はジャーナリストとして考える、私はジャーナリストとしていま会社がこういう決定をしようとしているがそれには納得がいかないとか。個人としての自覚が当時の自分にはすごく欠けていたなと、思います。

 それぞれのメディアが現在の規模をどれだけ維持できるかわからなくなってきたいま、企業に属しているという忠誠心を相対化し、自分が記者として、取材者として何を大事にして、どうスキルアップするかを考えてほしい。そう考えると縄張りを守るより、同世代の記者と語り合って情報、ノウハウを交換する方向になる。そこにこれからの期待があると思います。

※インタビューは10月5日、Zoomにて実施

プロフィール/外岡秀俊(そとおか・ひでとし)=1953年生まれ。東京大学法学部在学中に『北帰行』で文藝賞受賞。77年、朝日新聞社に入社。ニューヨーク特派員、欧州総局長、東京本社編集局長などを歴任。2011年に早期退社し、ジャーナリストとして震災報道、沖縄報道などに携わる。現在、北海道大学公共政策大学院(HOPS)公共政策学研究センター上席研究員。

(構成/AERA dot.編集部・鈴木顕)

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