テレビのワイドショーでは、公衆衛生や感染症の専門家が出演し、質問に答えるかたちをとっていました。聞きたい問題を専門家にこたえてもらうという点ではとてもよかったし需要があったと思いますが、それぞれの局で出てくる専門家が違い、おっしゃっていることも違う。あの当時必要だったのは、立場の違う専門家に集まってもらって対論する、座談会をする、そういうフォーラムをつくることだったと思います。

―――読者や視聴者がニュースに触れるのも、新聞やテレビからWEB経由へと変わっています。そうした環境で、マスメディアはどのようにニュースを発信していくべきだと考えますか。 

 ニュースの価値は、読者や視聴者の「切実度」と「関心の広がり」、その積で決まります。しかし「大事なニュースだからみてください」とメディアが一方的に判断しても、それを受け入れてもらえない時代になりました。繰り返しますが、それは装置産業としての優位性が崩れつつあるからです。「知ってもらうべきだ」という発想ではダメですね。

「関心の広がり」という意味では、いま人気があるのはこれです、とか、いまアクセスが多い記事はこれですというランキングがあります。これは世間の多くの人が関心を寄せている問題だということを示していますが、ニュースの「切実度」とは関係ない。それをフラットに順位付けするのはメディアの役割でない、と私は思います。いまメディアのニュースサイトはアクセス数を競っていますが、アクセス数だけに指標を求めると、本来のメディアの価値、メディアの役割がおろそかになってしまう。それが気がかりです。 

 原点は、読者、視聴者の目線に立って考えることだと思うんです。たとえば先日入管の問題が報じられましたが、在日外国人の絶対数でいうと少ないかもしれないが、あれだけひどいことが行われ、この国の負の側面をあれほど突きつけた問題はありません。こうした問題を伝えるのは、メディアにしかできないと思います。

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「五輪」「ノーベル賞」「国連」を突出した扱いに