両親の介護をする際、どこまで在宅でできるのか悩む人は多い。嫌がる親を無理やり施設に入れることはしたくない。でも、在宅で頑張って体を壊しては元も子もない。じゃあどうすれば──。実は両者の中間のような方法があることはご存じだろうか?
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記者(52)は現在88歳の父(要介護3)と82歳の母(要介護5)を介護中だ。枠組みでいうと「在宅介護」に入るが、実際は両親とも施設と自宅の両方で過ごしているといったほうがいい。
この施設は、在宅を希望する記者にとっては、最も大きな助けになったので、詳細は後述するが、そのおかげで仕事をしながら実家に通い、介護をしている。
今の形になるまでには紆余曲折があった。両親を完全に施設に入れたこともあったし、在宅か施設かで姉妹でぶつかっていた期間もあったが、結果的に両親が望んでいた在宅という形にできた。
介護の仕方や考え方は人それぞれ。置かれた状況も違うので、どこまでが在宅でできて、どこからが施設なのかの明確な線引きはできない。
今回、記者がここに至るまでにどんなことが起きて、どういう選択をしたかなどの経緯を紹介することで、「できれば在宅」を模索している人の参考にしていただきたい。
「2人同時に入れるからこれしかないよ」
昨年3月、姉が、新規で開く特別養護老人ホーム(以下、特養)を見つけてきて、そう言った。都内の一軒家の実家で暮らす両親を、安全な施設に入れたいと思っていた。
きっかけになったのは一昨年11月。母が玄関で転び、頭を打ったことだった。母はその日を境に、急激に歩けなくなった。
もともと両親は介護保険による介護と看護のサービスを利用していた。食事や掃除、洗濯といった生活介助から、看護師による入浴介助などだ。母が歩けなくなり、父の認知症も進み、夫婦での通院が難しくなると、夫婦そろって在宅診療にシフトし、月2回の往診医による健康観察や薬剤の処方、注射などを受けるようになった。
しかし、母の転倒の頻度は増え、父はそれに気づいても対応できず、おろおろするばかりで救急車を呼ぶことすら難しい。