昨年極端に少ないのはコロナ禍で試合数が少なかった影響だが、それを差し引いても明らかに減少傾向なのがよく分かる。今年も両リーグトップの山本由伸(オリックス)が10月14日終了時点で178回2/3となっており、日程的なことを考えても200イニング達成は現実的ではない。

 投手として最高の名誉と言われる沢村賞は先発完投型の投手を対象としており、7項目ある基準には200イニング以上登板、10完投以上というものがあるが、2010年以降でこの2つを満たすことができた受賞者は2011年の田中将大楽天・226回1/3・14完投)と、2018年の菅野智之(巨人・202回・10完投)の2人だけである。2019年には沢村賞の該当者なしとなっており、基準の変更も議題に挙がっているが、先発投手がフル回転する時代ではなくなっていることは明らかと言えるだろう。

 以前と比べて変化が見られるのはエースクラスの投手だけではない。ルーキー、若手に対しても慎重な起用法が目立つようになっている。今年は伊藤大海(日本ハム)、早川隆久(楽天)、伊藤将司(阪神)などルーキーが目立つが、伊藤大海と早川は大学卒、伊藤将司は社会人からのプロ入りであり、アマチュア時代の経験も豊富な投手たちである。

 高校卒では2年目の宮城大弥(オリックス)が多く起用されているが、それでも優勝争いをしている10月に疲労を考慮して一度登録抹消して調整期間を設けている。宮城と同期の奥川恭伸(ヤクルト)、佐々木朗希(ロッテ)の2人にいたっては、かなりこまめに登録抹消して状態を見ながら起用していることがよく分かる。高校卒業時点での完成度や体力、プロ野球のレベルの上昇などを考えると単純に比較することはできないが、今年引退を表明した松坂大輔(西武)や田中将大(楽天)、藤浪晋太郎(阪神)などが1年目、2年目からフル回転していたことを考えると、若手投手を守ろうという姿勢は強くなっているように感じる。

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今後の投手起用はどうなる?