
子どもの食物アレルギーは、親にとっては身近で切実なテーマだが、診断は難しい。卵などのアレルゲンは早めに食べさせた方がアレルギーの発症が少ないという。AERA 2021年10月18日号は「アレルギーの新常識」特集。
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1歳の子を持つ女性(29)は、離乳食の本を見て途方に暮れた。
「すりつぶしてこの量で、次の月齢になったらこうして……。完璧に守るのは無理と思いました。卵も卵黄からというけど、最初は怖くて食べさせられなかった。結局、先輩ママのインスタを参考に7カ月で卵黄から食べさせ始めました」
卵を食べさせ始める時期を決めるのは、多くの親にとって難しい。滋賀県のおかだ小児科医院院長の岡田清春医師は話す。
「母親たちに、卵は過敏に避けられている面があります。ちょっと食べさせて口の周りが赤くなったから、もう食べさせないと自己判断する保護者もいます。『アレルゲンの多い卵白は怖い』という人もいます」
鶏卵はタンパク質が豊富で、完全栄養食ともいわれる。だが、2歳までの子どもにとっては食物アレルギーの最たる原因食品でもある。
子どもの食物アレルギーの3分の2は鶏卵、牛乳、小麦だ。これらが原因の場合、6歳までに7~8割が治るという。
■「除去」で患者増えた
以前は原因食物を厳格かつ広範囲に除去(食べさせないこと)してリスク管理していた。2000年に米国小児科学会は「卵は2歳まで、魚とナッツは3歳まで除去」などと推奨した。
だが、かえって患者が増えた。1997年に0.6%だった米国の子どものナッツアレルギーの有病率は、08年には2.1%に増加。同年、米国小児科学会は除去を推奨しなくなった。
食べ始めを遅くしても、アレルギーを予防できるわけではない。むしろ早く食べさせることが、予防になると考えられるようになった。
早期摂取による予防効果には、15年に発表されたイギリスの研究がよく知られる。アトピー性皮膚炎や卵アレルギーのある1歳未満の乳児に5歳まで少量でもピーナツを継続摂取させると、ピーナツアレルギー発症率は3%だったが、5歳まで食べさせなかった子は17%だった。