年齢別即時型アレルギーの原因食物(AERA 2021年10月18日号より)

 その後、国内でも卵や粉ミルクを早期に摂取すると予防になるとする研究が発表された。

 だが、食べさせ方が難しい。もう一度、卵の話に戻ろう。

 厚生労働省がまとめた「授乳・離乳の支援ガイド(19年改訂)」の「離乳の進め方の目安」には、「5、6カ月ごろ」から「卵黄等を試してみる」と書かれている。

 一方、日本小児アレルギー学会は、17年、卵アレルギー予防の提言に関する一般向け解説で、「6カ月頃より微量の加熱全卵を食べ始めます」と公表。ちなみに元となる提言では、アトピー性皮膚炎のある乳児は「6カ月から鶏卵の微量摂取を」としている。生後6カ月から加熱全卵粉を食べさせたアトピー性皮膚炎のある乳児は、食べさせなかった乳児に比べて1歳時の卵アレルギーの発症率が8割減ったという研究結果がある(16年、国立成育医療研究センターなどが発表)。

■早期に微量食べさせる

 厚労省の「卵黄」に対して、学会は「全卵」。この違いには理由があるのか。

 日本小児アレルギー学会理事長で国立病院機構三重病院の藤澤隆夫さんは解説する。

「提言の根拠となった16年の研究では、生後6カ月から0.2グラム相当の卵を食べさせました。この研究に合わせて、提言でも全卵としています。大切なのは早期に微量を食べさせることで、卵白か卵黄かは大きな問題ではないと思います」

 支援ガイド研究メンバーの杏林大学医学部、成田雅美医師は言う。

「5、6カ月で卵白を食べてはいけないという意図ではなく、卵黄から始めましょうという程度ですが、卵黄だけがいいという科学的根拠はありません。また、『卵黄』を、『卵白も』『全卵』と書き換えるほど、卵白に関するエビデンスが十分ではない。アレルギー対策だけでなく卵黄から食べさせることが多いという日本の食習慣にも配慮し、ガイドではこのような記載になっています」

 こうした事情を背景に表記は揺れ、親たちも揺れている。

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