さらに、子どもの場合、食物アレルギーの診断が適切でないケースが少なくない。「牛乳(卵、小麦)を飲んで吐き出したから」と医師に診せずに親が自己判断するケースや、不十分な問診のみで医師が「除去」を指導することもある。血液検査(特異的IgE抗体検査)や皮膚テストの結果だけでは本来、確定診断にならないのに、食物アレルギーと診断することもある。

 昭和大学医学部小児科学講座教授の今井孝成医師は言う。

「血液検査で特定の食べ物に対してIgE抗体の値が高くても、必ずしも症状が出るわけではありません」

■経口負荷試験が必要

 たとえば、鶏卵、牛乳、小麦を含むケーキを食べてアレルギー症状が出て、血液検査で鶏卵、牛乳、小麦が陽性となった。どれがアレルゲンかを確認せず、三つとも除去すると、不必要な除去になりかねない。不必要な除去は、子どもから食べる機会を奪い、成長に悪影響を及ぼしかねない。

「原因食物の確定診断には、疑いのある食べ物を食べ、アレルギー反応が出るかを調べる『食物経口負荷試験』が必要です」(今井医師)

 経口負荷試験は、確定診断に加え、「安全に摂取できる量」「食べられるようになり除去を解除できる」も明確にわかる。

 これとは別に、一部の医療機関では、まだ研究段階の取り組みだが、「食物経口免疫療法」が行われている。治癒が望めない小児に原因食物を症状が出ないごく少量から食べさせ始め、量を段階的に増減させながら、目標量を食べられるようにする治療法だ。アナフィラキシーのリスクがあるため、専門の医師による管理が不可欠で、限られた施設で限られた小児を対象に行われている。当初は「6歳を過ぎても治らなかった小児」が対象だったが、近年では「6歳を過ぎても治らないと推測される小児」に、経口負荷試験の結果を見て、より早く始める試みが行われている。

 一方で、冒頭のように、卵などの食品の摂取についても指導できる医師が少なく、家庭任せになっている現状もある。

 子どもの食物アレルギーの診療格差は大きい。(編集部・井上有紀子、ライター・羽根田真智)

AERA 2021年10月18日号

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