前回の平昌五輪では銅メダルだった高梨沙羅 (c)朝日新聞社
前回の平昌五輪では銅メダルだった高梨沙羅 (c)朝日新聞社

 スキージャンプW杯は10シーズンで勝利数60で、表彰台は109。男女を通じた歴代最多記録を打ち立てている高梨沙羅だが、五輪は過去2大会で4位と3位。その勝利を得る難しさをこう語っていた。

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「自分の中では五輪で結果を残すことは、今まで支えてくれた人たちや、日本の女子ジャンプを切り開いてきてくれた先輩たちへの恩返しになると思っている。それを果たしたいと常々思っているけど、世界選手権も含めた大きい大会で勝てないのはなんでだろうと考えるけど、わからないんです。特に五輪は、4年間すべてを捧げてやってきたものがその一瞬、10秒程度が2回の合わせて20秒で決まってしまうじゃないですか。その20秒に4年間やってきたことを合わせる能力は何だろうと考えて……。アベレージを上げていくしかないと思うけど、『上げ切ったところで挑んでもダメな時があったよな』と考えると、もっと違う何かが必要なんだと思うし。どうしたらいいのかというのが単純にわからないんです」

 だからこそそれを追求したいという思いは、2回の五輪と、個人は無冠だった6回の世界選手権を経験してさらに強くなっている。

 平昌五輪シーズンはマーレン・ルンビ(ノルウェー)とカタリナ・アルトハウス(ドイツ)の躍進で、五輪とW杯総合1位と2位を占められた。ふたりはともにパワフルに踏み切るジャンプの精度を上げてきた。五輪では高梨も銅メダルを獲得したが、得点では上位を占めたふたりに大差をつけられた。

 その流れに対抗するために、高梨もジャンプ台に力を伝える踏切に取り組み始めた。だがそれがジャンプを狂わせ、その後の2シーズンはW杯も1勝ずつで総合4位と落ち込んだ。だが、五輪プレシーズンになってそれが形になり始めた。

「最初の2年は本当に苦しくて、目指すところもよくわからないまま探り探りの状態だったけど、今年に入ってそれが形になり始めて自分の思った以上の結果も出すことができた」

 こう話したように、今年1月31日のW杯ではジャンプ台にしっかり力を伝える踏切ができるようになって2位に。そしてその後は4戦3勝と調子を上げて世界選手権に臨んだ。

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昨季は勢力図に大きな変化