「マーケットは岸田首相の誕生を正直、喜んでいない。連日、下落だよ。新自由主義からの脱却など、国がもうかることを歓迎していないかのようだ」
対する枝野代表は年収1千万円程度以下の人の所得税を一時的に実質免除し、低所得者には年額12万円の現金を給付。富裕層や大企業の優遇税制を是正し、所得税の最高税率を引き上げ、法人税にも累進制を導入するとした。立憲民主党の中堅議員の一人はこう胸をなで下ろす。
「枝野代表が時限的でも、消費税の5%引き下げに言及するか、やきもきした。当初は党内の増税派を意識してか、具体的な数字を口にしませんでしたから。後になってはしごを外されるのも困るので、地元で配るビラに消費税のことはふれないようにしていたくらいです」
とはいえ、財源は「100年に一度の緊急時だから国債でやるしかない」(枝野氏)と、この点は岸田氏と同じだ。
次に「選択的夫婦別姓」について。枝野氏は、11日の代表質問で岸田首相にこう迫った。
「選択的夫婦別姓制度の導入を法制審議会が初めて答申したのは1996年。私は初当選以来28年間も、その実現を訴え、何度も議員立法を提案してきました。もはや議論は十分です。決断と実行の時であります」
■消えたLGBT法
これに対し岸田首相は「しっかり議論します」と暖簾(のれん)に腕押しの回答だった。「選択的夫婦別姓」とLGBTなど性的少数者をめぐる「理解増進」法は自民党内では意見が二分されるテーマだ。稲田朋美元防衛相が超党派で「理解増進」法の成立に旗を振った。だが、最後の最後に反対派の激しい抵抗に遭い挫折した。その急先鋒の一人が政調会長となった高市早苗氏だった。「理解増進」や「選択的夫婦別姓」は自民党の政権公約から文言が消えた。自民党ベテラン議員の一人はこう内情を打ち明ける。
「自民党の政策の門番と言われる政調会長に高市氏が就いたことで、何をか言わんやです。岸田さんは非常にリベラルですが、自民党の政策を左右できる力もないし、そこにエネルギーを注ぐ気もない。党内のリベラル派にとって冬の時代になることは間違いありません」