「分配なくして成長なし」と訴える枝野代表(左)、「成長も分配も」が基本だが、まずは成長と話す岸田首相(c)朝日新聞社
「分配なくして成長なし」と訴える枝野代表(左)、「成長も分配も」が基本だが、まずは成長と話す岸田首相(c)朝日新聞社
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 4年ぶりとなる総選挙が始まる。与野党はどんな政策を訴え、コロナ禍で疲弊する日本をどう導こうとしているのか。AERA 2021年10月25日号の記事を紹介。

【比較表】コロナ対策、消費税…自民と立憲の主な主張の違いはこちら

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 10月14日、午後1時。衆議院本会議場。すでに政界からの引退を表明している大島理森衆院議長の元に、恭しく紫の袱紗(ふくさ)に包まれた解散詔書が届けられた。数秒後、静寂に包まれた国会に大島議長の声が響き渡った。

「日本国憲法第7条により、衆議院を解散する」

 直後、議場のどこからともなく「バンザーイ」の声が上がり、自民党議員を中心に万歳三唱が続く。あっという間に本会議は終了。身分を失った前衆院議員は、少しでも早く自身の選挙区に戻ろうと議場を後にした。

■数十兆円の経済対策

 解散総選挙は「政権選択」の選挙だ。岸田文雄首相率いる「自民党」と、野党第1党の枝野幸男代表率いる「立憲民主党」。どちらが今後の政治の舵取りを担うのかを決める選挙だ。与党・自民党にとっては「安倍・菅政権」の約9年間に、国民が審判を下す選挙とも言える。

 そこで、政権を握る可能性があるこの2党の政策を吟味しようというのだが、争点の中でも違いが際立つ「消費税」「選択的夫婦別姓」「モリ・カケ・サクラの再調査」を取り上げる。

 まず、消費税の取り扱いは「社会保障の財源として位置づけられており、当面、触れることは考えていない」という岸田氏。「時限的に消費税率を5%に引き下げる」という枝野氏と、真っ向から異なる。

 そもそも、新型コロナの影響で冷え込んだ経済をどう立て直すのか。岸田氏は総裁選の公約で、数十兆円規模の経済対策を断行するとしたが、その原資は国債を充てるという。また、総裁選では株式の譲渡や配当金など「金融所得課税」の引き上げに言及したが、早くも所信表明でその文言は抜け落ち、自民党の選挙公約にも入らなかった。背景には日経平均株価の下落がある。ある金融庁関係者は渋い顔をする。

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