自民と連立を組む公明は、九つの選挙区に立てた候補者全員の当選と、比例区で800万票の獲得を目標に据える。
だが、党勢の陰りは明らかで、2017年の衆院選では比例区の獲得票数は697万票と、現行の選挙制度で初めて700万票を割った。支持母体の創価学会がコロナ禍で政治活動を制限せざるを得なくなり、フレンド票の発掘もままならない。公明の全盛期を支えた学会員の高齢化も進む。
岸田氏が安全保障政策で“タカ派”路線を打ち出したことも、公明=学会票離れを加速させる可能性がある。対中国強硬姿勢に加えて敵基地攻撃能力の保有の容認、憲法改正にも言及するなど「アベ化」が止まらない。
公明の元幹部が語る。
「自公が対峙していた時代でも、宏池会の大平正芳氏や木曜クラブ(田中派)の田中角栄氏とは関係がよかった。両派閥ともハト派でしたからね。学会の集票力の低下に加え、いまの岸田氏の主張には乗りにくいですよね。自民への支援票を棄権する人は少なくないはず」
一方の野党は、立憲民主が議席を伸ばし、「27議席増」(野上、角谷両氏)となった。野党共闘のために多くの選挙区での独自候補の擁立を見送った共産は比例区で議席増が見込まれそうだ。日本維新の会は大阪を中心に自民と互角以上に戦い、議席を大きく増やしそうだ。
だが、特に野党第1党の立憲に望まれるのは“善戦”ではなく、政権交代を目指す“激戦”だ。
にもかかわらず、立憲の枝野幸男代表はテレビの報道番組で、司会者から衆院選で政権交代を実現する確率を聞かれると、米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手を引き合いに「大谷選手の打率(2割5分7厘)ぐらいの可能性はあるというつもりで頑張っている」と語った。角谷氏が厳しい目を向ける。
「本気で勝つ気があるのか。何が何でも勝つという気概がなければならないのに、これでは政権が取れるわけがない。野党第1党のポジションが居心地いいということなのでしょう。衆院選で勝つためには、菅義偉氏を総理の椅子から引きずり下ろし、総裁選でお祭りムードを盛り上げた自民のほうがよほど努力しています。本気度のちがいが出てしまっています」
つまるところは、勝者なき衆院選になるのか。(本誌・亀井洋志、秦正理、池田正史)
※獲得議席予測、各選挙区の当落予測については調査の結果ではありません。公示日前に識者2人が予想しました。
※週刊朝日 2021年10月29日号より抜粋