医療機関では、がんなどの病気を除外するため、まず問診がおこなわれる。必要と判断されれば内視鏡検査や血液検査、ピロリ菌の有無を調べる検査などもおこなうことがある。ピロリ菌は胃がんの原因とも言われ、ピロリ菌関連の胃炎やさまざまな症状を引き起こすため、ピロリ菌がいる場合には薬剤による除菌をすすめられる。

 機能性ディスペプシアの典型的な症状には、みぞおちの痛みや灼熱感(焼けるような感じ)、食後の胃もたれ、食事中の早期膨満感(すぐにおなかがいっぱいになる)などがある。兵庫医科大学病院消化器内科の三輪洋人医師は言う。

「胃の感じ方(知覚)が鋭敏になれば胃の痛みを感じるし、胃の働きが悪くなれば胃が重いと感じます。このような胃の感じ方や働きは、交感神経と副交感神経からなる自律神経によってコントロールされています。仕事、人間関係、気温の変化などさまざまなストレスや、暴飲暴食、睡眠不足などで自律神経のリズムが乱れることによって、いろいろな症状が出てきます」

 治療方法は、薬物治療と生活改善である。

 薬は、まず胃酸の分泌を抑える薬が使用される。胃酸が、胃の働きや知覚に影響を与えていることが考えられるためだ。また、胃の働きを良くする消化管運動機能改善薬や胃の粘膜を保護する薬、漢方薬や抗不安薬などが使用されることもある。

 これらの薬を4~8週間服用するとともに、食生活を中心とした生活習慣の改善にも取り組む。

 食生活では、高カロリー・高脂肪の食事や食べすぎを避け、規則正しい食事を心がける。睡眠不足など不規則な習慣を改め、生活のリズムを整えることも重要だ。

 また、生活をする上ではさまざまなストレスが避けられないが、できるだけ少なくすることを心がけたい。

「自律神経が関連する機能性ディスペプシアでは、ストレスが大きく影響します。例えば、胃の症状があること自体がストレスになっている患者さんの場合、問診や検査で大きな病気ではないことを確認した上で、原因が胃ではなく自律神経にあることを丁寧に説明すると、それだけで安心して症状が軽減することもあります」(三輪医師)

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