ハーバード時代、ヨーヨー・マ氏と共演(廣津留さん提供)
ハーバード時代、ヨーヨー・マ氏と共演(廣津留さん提供)

 学生の活動への補助も充実していて、「日本でインターンをやりたい」と言うと往復の飛行機代を、冬休みに「他の国で実地調査をしたい」と言えば宿泊代を出してくれる。とにかく熱意を伝えれば援助してくれるという制度が整っていました。特にアイビーリーグ(アメリカの8つの名門私立大)では、経済的に成功した卒業生たちがその時の恩を寄付金で還元するというシステムができています。卒業翌日には私の元にも、寄付をお願いするメールが届きました。しかも「あなたのいた寮に新入生が入りましたよ」みたいなパーソナライズされたメールがくるんですよ。寄付したくなるじゃないですか。すごく上手なんです。

■環境をどう生かすかは個人にかかっている

――海外大の制度や学生生活は、理想を現実が超えていた、ということですね。

 そうですね。でも、この環境をどう生かすかは、個人にかかっているかもしれません。勉強だけを目標にするとちょっとよくないかもしれない。私は学業と別に、バイオリンという熱中できるものがあった。大学関連の様々な場面で演奏の機会を得て、それが世界的チェリストのヨーヨー・マの関係者の目に留まって共演につながりました。音楽を社会貢献のツールとしているヨーヨー・マとの出会いのおかげで、バイオリニストという道を極めたいと思うようになったんです。私の場合はバイオリンでしたが、これがスポーツの人もいる。自分が一番だと思える分野を、1学年1600人みんなが何かしら持っていると思うんですよ。在学中のどこかで、私はこれをやるんだと実感する瞬間があるんじゃないかな。

――アメリカの大学での経験から、日本の大学が変わるべきところがあるとすれば何だと思いますか?

 質問力を生かす環境ではないでしょうか。アメリカの授業では質問をしない=出席したことにならないと捉えられるので、みんなひたすら質問したがるんです。日本でも、授業をさえぎってでも質問するような人がもっと増えていい。何十年と同じ内容の授業をしている先生がいるとも言われますが、そういう環境になると、先生も学生の質問に答えるために自分をアップデートするようになると思うんですよね。私はいま成蹊大学と国際教養大学で授業を受け持っていますが、最初に、「ここはセーフスペースだから何を意見しても大丈夫よ」と言ってから始めるようにしています。

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海外大を目指すなら大人の言うことを聞くな