50年に及ぶ格闘人生を終え、ようやく手にした「何もしない毎日」に喜んでいたのも束の間、2019年の小脳梗塞に続き、今度はうっ血性心不全の大病を乗り越えてカムバックした天龍源一郎さん。人生の節目の70歳を超え、2021年9月には「日本プロレス殿堂会」で殿堂入りを果たした天龍さんが伝えたいことは? 今回は前回に続き「殿堂入り」をテーマに、つれづれに明るく飄々と語ってもらいました。
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前回に続き、今回も“天龍源一郎の個人的殿堂入り”がテーマだ。今回は俳優、歌手、そしてぶっちぎりで天龍の殿堂入りの人物を紹介しよう。
俳優で個人的な殿堂入り、まずは松方弘樹さんだね。撮影が終わった後もスタッフを連れて飲みに行ったりと、いかにも“映画スター”だ。松方さんの伝説はいろいろ聞くけど、一緒に酒を飲んだ時もかっこよかった!お父さん(近衛十四郎)もスターだったから、それを引き継いだんだね。相撲で言えば、大鵬さんや北の富士さんのような大スター。一緒に飲んだときにそんな姿を見せられて、その在り方を教えられた気がするよ。
それにしても松方さんはきれない飲み方をする人だったね。人に「飲め」と強要しないで、自分のペースで、フランクに話して、心地いい空気を作るんだ。それがいかにも遊び人という雰囲気なんだよなぁ。それでいて松方さんは酒が強かったし、乱れずに、ずっと同じペースで飲んでいて、一方の俺は調子に乗って飲んで一人だけベロベロになってしまった。松方さんが後のインタビューで「酒で唯一負けたのが、天龍源一郎さん」と名前を出していただいて恐縮したけど、遠回しに「あんな乱暴な飲み方をするもんじゃないよ」と諭されたような気分だ。俺は「ほら、飲もう! 飲もう!」「誰か歌え!」という飲み方だから。後になって「あのときは無理やり飲まされて……」と批判されるんだ(苦笑)。
それから高橋英樹さん。俺が相撲に入ったばかりの中学生のころ、二所ノ関部屋の近くに日活の映画館があってよく映画を観たけど、そこで主役として活躍していたのが高橋英樹さんだ。轟由紀子さんがヤクザの女ボスで、英樹さんがその息子で組を受け継ぐ『男の紋章』シリーズだったな。英樹さんはヤクザの親分役で出ていて、ものすごい貫禄があった。中学生だった俺はてっきり、結構なベテランの役者だと思っていたが、英樹さんは俺の6歳上で、当時は20歳そこそこだ。それでいて日活の主役でヤクザの親分を演じているんだから、役者としての貫禄が桁違いだよ。今でもバラエティに出たりと、現役感がすごいよね。