高倉健さんもヤクザ映画から晩年は人情ものに出演して、しっかり役を演じ切って、幅が広い。本当の役者とはそういう人を指すのだと思う。普段と同じようにしゃべって、それを映像で見せて、それが役者だっていうのは違うよ。今の俳優は地で演じているだけで、役に入ってガラっと変わる人って少ないよね。普通のしゃべり方で、映画やドラマとテレビに出演してる時とあまり変わらないし、普段と違う役をやると映画が振るわなかったり、視聴率が悪かったりするもんね。昔の役者はどんな役でもアベレージを保っていたと思うんだよ。
それにしても、役者は雨のシーンでびしょ濡れになりながら何テイクも撮って、監督が気に入らなかったら何度もやり直しさせられて大変だよ。「何十回も撮り直しさせられて、ぶっ殺してやろうかと思った」なんてコメントもたまに聞くよね。俺たちプロレスラーは気に食わなかったらリングの上で発散することができるけど、役者はできないからかわいそうだね(笑)。
そうそう、女優さんでは吉永小百合さんも俺の殿堂入りだね。昔から、ずっとトップを走り続けて、いまだに日本でトップの女優だ。俺は吉永さんと同じジムに通っていたことがあるんだけど、吉永さんはいつも1時間くらいずっとプールで泳いでいて、厳しくシェイプしているんだなって尊敬したもんだよ。それで、ジムに通っている共通の知り合いが吉永さんに「天龍さんもいるし、プロレスを観に行きませんか?」と誘ったんだけど「私、プロレスはちょっと……」と断られたらしいんだ……。それを聞いて、俺の吉永さんのファン度が半分くらいになった。吉永さんは野球が好きで西武球場にはよく行くのに、プロレスはダメなのか、チクショー! って(笑)。あれから年齢も重ねて趣味も変わっているかもしれないから、もう一度誘ってみようかな? 吉永さん、プロレスを観に行きませんかー?(笑)。
ハリウッド俳優ではジョン・トラボルタはいい役者だよね。『サタデー・ナイト・フィーバー』でアイドル的にブレイクしたけど、今でも息の長い役者で活躍している。それから、アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロも殿堂入りだ。そういえば二人とも『ゴッド・ファーザー』シリーズに出ているね。今まで何度も観ている映画だけど、テレビで放送しているとやっぱりまた観ちゃう。それぐらい彼らの演技に引き込まれてしまう。何回観てもいい映画だ。トラボルタもアル・パチーノもデ・ニーロも演じてきた役柄とリンクするように、いい感じに老けていくよね。エージェントが付いていて役柄を選んで、それをしっかり演じて、経験を積み重ねた証だろう。