北京五輪に向けた熱い氷上の戦いが開幕した。日本フィギュアスケート男子シングルの出場枠は3枠。次世代選手や海外勢の活躍がメダル争いにどのように影響してくるのか。AERA 2021年11月1日号では、五輪出場枠争いを控えた国内の男子選手たちを追った。
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今季はコロナ禍のなか国内大会に出場する選手も多く、来年2月に開かれる北京五輪への出場をめぐるレースは、早くもヒートアップしている。
男子は、五輪3枠の切符を濃厚としているのが、羽生結弦(26)、宇野昌磨(23)、鍵山優真(18)の3人だろう。ソチ、平昌と五輪連覇を果たした羽生は3連覇を狙うこともできるが、4年前とは気持ちが違うという。
「平昌シーズンのような絶対に金メダルを獲りたいという気持ちは特にありません。ただ必ずこのシーズンで4回転アクセルを決めるんだという強い意志はあります」
人類未到の4回転アクセルを降りれば結果もついてくるが、ミスした場合の減点も大きく、けがのリスクもある。挑戦者の心と五輪王者としての自信が、北京の地でどんな化学変化を起こし、新たな“羽生結弦”を見せてくれるのか。期待が膨らむ。
一方の鍵山は、可能性の塊だ。昨季はシニアデビューの勢いもあって、2種類の4回転をキッチリ決める演技で世界選手権2位に。しかし3種類に挑んだ羽生や宇野を見て、
「本当に世界で戦うためには4回転の種類が足りなかった」
と奮起。今季は4回転ループとルッツの2種類を新たに練習中で、試合に組み込んでいく。
この鍵山から逆に刺激を受けた宇野は、ここ3年封印していた4回転ループを復活させ「フリーで4種類5本」に挑む。
「鍵山くんが4回転ループとルッツを練習で降りているのを見て、僕も3種類では時代に置いていかれると思いました。彼に尊敬されているからこそ、期待に応えられる選手でいたい」
■ネイサンvs.日本
次世代も力をつけている。特に2019年ジュニアGPファイナル王者の佐藤駿(17)は、大技の4回転ルッツとフリップがあり、決まれば大逆転もある。
日本男子が北京五輪で戦う最大の相手は、米国のネイサン・チェン(22)。世界選手権3連覇中で、5種類の4回転を持つ。彼の牙城を、日本男子3人が束となってかかることで崩せるか、注目したい。(ライター・野口美恵)
※AERA 2021年11月1日号より抜粋