松田優作さんの墓前に、今回の公演の報告をした野瀬哲男さん(後列右から2人目)ら=提供写真
松田優作さんの墓前に、今回の公演の報告をした野瀬哲男さん(後列右から2人目)ら=提供写真

 文学座時代、教室でも目立ってました。授業でラブシーンを演じたとき、その稽古でホントにブチューッとキスしたんで、皆びっくりしたんです。うわーっ、となりました。本番でやるのは分かるんですけど、普通、稽古ではしません。まねするだけです。アニキは練習のときから本気なんです。相手の女性はビックリして、そのあと、惚れてましたね。

 格好良かったし、アニキはモテましたよ、メチャクチャ。本気度が分かるんじゃないですか。それは何事に対してもで、芝居に対しても、勝負事に対しても……麻雀ひとつ取ってもね。当時、授業が終わると、雀荘に行って麻雀するか飲むかで、僕もバイトが始まるまでの時間に麻雀しましたけど、バイトの給料の半分はアニキの財布の中です。強いんです。アニキが一番強くて、皆から巻き上げてたって印象です。

 めっちゃくちゃ負けん気が強いんですよ。負けず嫌いです。たとえば、僕がオセロを持ってったとき。アニキはそれまでやったことがなくて、僕が勝ったんです。そうすると、「もう一回」「もう一回」となって、本人が勝つまで止めさせない。で、アニキが勝つようになったら僕は二度と勝てませんでした。

 将棋でも、僕、サウナで意識不明になりましたからね。「すみません。水飲ませて下さい」って言っても「まだ勝負がついてねぇ」って言って、出してくれないんです。で、勝負がついて「テツ、水風呂でも浴びて来い」って言われて「ありがとうございます」と言ったあと、脱水で意識不明になって……気が付いたときは「テツ、大丈夫か」って言いながらボンボンたたかれてて、そこまで僕は記憶がないんです、危ないでしょ。見境ないですよ。二度とサウナで将棋しませんでした。

 何であんなに勝負事が強かったかって言うと、そういうことだと思うんです。僕が勝ったのはオセロぐらいですよ(笑)。

 日テレのプロデューサーたちが「太陽にほえろ!」の、ショーケン(萩原健一)のあとの刑事を文学座に探しに来るらしい、って情報が流れたことがあってね。皆、緊張してたんですが、アニキ一人だけ緊張してなかったなぁ。

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「現場には最低20分前には入ってろ」