フィギュアスケートのグランプリシリーズが10月22日に開幕した。初戦で宇野昌磨が総合2位となり、来年2月の北京五輪に向けて好スタートを切った。AERA 2021年11月8日号では、宇野昌磨選手の新たな挑戦と今シーズンに懸ける思いを取材した。
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グランプリ(GP)シリーズに熱気が戻ってきた。
10月22~24日に米ラスベガスのオーリンズ・アリーナで開催されたフィギュアスケートのGP第1戦、スケートアメリカ。新型コロナウイルスの影響で、昨季の大会は米国を拠点とする選手のみの出場で無観客だった。「国際大会」として海外の選手も集まり、観客を入れ、華やかな雰囲気に彩られるのは2年ぶりだった。
日本勢で注目されたのは男子の宇野昌磨(23)だ。
2018年平昌五輪銀メダリストは、近年思うような結果を残せていない。19~20年シーズンはGPシリーズで表彰台に上がれなかった。昨季はコロナの影響でGPシリーズには出場できず、世界選手権も4位に終わった。北京五輪シーズンで、巻き返しを図れるのか。一つの焦点となっていた。
開幕前日の21日、取材に応じる表情は充実していた。
「シーズン序盤から、毎日成長できる練習ができているし、高望みできる調子にある。試合が楽しみという気持ちよりも、試合で今の自分を知りたい、皆さんに見せたい気持ちがある。これまでとは少し違うかな」
迎えた22日のショートプログラム(SP)。冒頭のジャンプでいきなりつまずいた。4回転フリップが2回転となり無得点に。引きずりそうなミスだが、ここから真価を発揮した。
直後の4回転─3回転の連続トーループ、後半のトリプルアクセル(3回転半)を成功。「いつもだったら、もう失敗したくないという気持ちで4回転─2回転にして、終わった後にほっとしていたと思う」
技術だけでなく、心の強さを見せた演技だった。
■打ちのめされてもやる
そして、23日のフリーだ。
宇野は今季、4回転を5本投入することを明かしていた。10月1日にはこう語っていた。
「『このプログラムができる段階まで成長して、世界のトップと戦える選手になりたい』という気持ちを込めて、たとえどれだけ失敗して、打ちのめされてもやりたい」
チャレンジした。