冒頭の4回転ループで手をつき、続く4回転サルコーは回転が足りず、3回転の判定となった。一方、2本跳んだ4回転─2回転の連続トーループは成功。後半の4回転フリップはこらえた。
合計270.68点は2位。初戦としては良い出来と思えるが、
「求めるレベルまで到達していない現実を改めて再確認した」
3季ぶりのGPシリーズ表彰台にも満足感はなかった。
その真意を語ったのは、翌日、メディア数社の取材に応じたときだった。
「自分の考えをいい意味で裏切られた」
今大会3位に沈んだ世界選手権3連覇中のネーサン・チェン(22)=米国=の演技を見て、そう思った。SPで珍しくジャンプの転倒があって4位となったチェンは、翌日のフリーに4回転を5種類、6本組み込む異次元の構成で臨んだ。
そのチャレンジは、宇野の心を揺さぶった。
「正直、僕のプログラムより上の構成をやる人はいないと思っていたが、ネーサン選手の構成を見たらループも跳んでいたし、彼はルッツもフリップもサルコーもトーループも跳べる。確率的には僕より高いものが多い」
「この(今大会の自分の)構成で、これ以上はスケート人生が終えるまでないかなと思っていたが、そんなことはない。僕はルッツが少し厳しい部分があるが、どうしていくかは今後また、たとえシーズン中でも考えていきたい」
■ルッツへの再挑戦も
苦手なルッツへの再挑戦を含む、さらなる高難度の構成に挑む可能性まで示唆した。その思いは北京五輪とは切り離して考えている。
「たぶん五輪がなくても、特別なシーズンという認識だった。今年の自分の出来、状態、そして数年間の成績が落ちていることも考えると、どうにかやりたいという気持ちが強い」
まずは5本の4回転を完成させる。その先には、また上の目標が待っている。宇野はそんな刺激を受けられたことが、うれしそうだった。(朝日新聞スポーツ部・岩佐友)
※AERA 2021年11月8日号より抜粋