ジジは、いつもニャアニャア陽気におしゃべりして歩いていたのに、まったく鳴かなくなり、“無口”になってしまった。ハクは、ぱーっとどこかにいなくなって、探したら、息子の部屋のクローゼットの奥のほうに隠れていたんです。今までそんな所に隠れたこともないのに、幾日もでてきませんでした。

 ハクのその行動を見て、もしかしたら、と思いました。

 実は、はガガが病院に通ったときに、私はハクにこう言っていたんですよ。「『今まで長い間、優しくできなくてごめんね』って、そう謝っときや」と。なのに、あまりにも急でそれが叶わなかったから、ハクの中で「ゴメンが言えてなかった、言えないままやった」という思いがあったんじゃないかな。

 ジジは頭をなめて(ガガと)お別れできていたけど、ハクにはできていなかった。それで「現実逃避」をしたのかもしれません。

 残された動物のこうした行動を見るのは、初めでした。2年前に犬のブクが逝った時、ガガは亡骸を嗅ぎにいっては、威嚇のようにシャーをしたものでしたが……。

ガガちゃん、9年ありがとう(提供)
ガガちゃん、9年ありがとう(提供)

◆今、こみ上げる感謝の思い 9年も生きてくれてありがとう

 ガガが旅立って一カ月経ち、ジジもハクも“ふだん通り”に戻りました。

 私もようやく、ガガの不在を受け止めることができるようになってきました。

 そういえば、獣医さんからは「エイズとは関係ない(発症していない)けど、免疫が弱いので、かかりやすい病であったのかもしれない」といわれました。

 裏返せば、家にいたからこそ、今まで元気でいたということ。

 もともと私は、あの子の「死に場所」を考えて、家にいれたのですもの。そう思い返すことで、この悲しみを乗り越えられそうな気がしました。実感がわかず、すぐには泣くこともできませんでしたが、今、感謝の思いがこみあげています。


「ガガを暖かな家で逝かせてあげられたこと、最期に大好きな息子の声を聞かせてあげられたこと、そして9年も生きてくれたことに……ありがとう」

 この先、自分が小さな子猫を飼うのは難しそうです。年齢的なことを考えると(最後まで)しっかり責任を持てないかもしれないので。

 それで、ガガが使っていたケージの“譲渡先”を探していたのですが、つい先ほど、保護活動をしている方が、「新たな保護猫のおうちにしたい」と名乗り出てくださいました

 きっとガガも、空でお嬢さま然として、こう言ってることでしょう。

 いいわよ、私の使っても!って。 

(水野マルコ)

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「猫をたずねて三千里」は猫好きの読者とともに作り上げる連載です。編集部と一緒にあなたの飼い猫のストーリーを紡ぎませんか? 2匹の猫のお母さんでもある、ペット取材歴25年のベテラン・水野マルコ記者が飼い主さんから話を聞いて、飼い主さんの目で、猫との出会いから今までの物語をつづります。虹の橋を渡った子のお話も大歓迎です。ぜひ、あなたと猫の物語を教えてください。記事中、飼い主さんの名前は仮名でもOKす。飼い猫の簡単な紹介、お住まいの地域(都道府県)とともにこちらに連絡ください。nekosanzenri@asahi.com

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