そんな原さんの思想形成の背景には、父親に連れられて鉄道で地方を旅した幼少期からの経験がある。
「一口に日本といってもいろいろだと感じていました。政治の現場は具体的な空間や風土などに規定されているので、抽象的な次元でのみ論じていても政治の実態は見えないのではないか。そんなところから、アカデミズムのテキスト中心主義には最初から違和感を持っていました」
国会図書館勤務や新聞記者として皇室取材に携わった経験がある原さん。アカデミズムとジャーナリズムの両方に軸足を置くことは、研究を「本店」、ジャーナリスティックな仕事を「夜店」と言った丸山眞男のように、ある意味自然なことなのかもしれない。
高校1年生のときに、北海道の国鉄全線に乗車した。コロナ禍が収束したら行ってみたい場所として再び北海道を挙げる。
「いつ廃線にされるかわからない路線が結構あることと、すでに廃線にされたところがどうなっているのかが気になります。私が高1の時は北海道からSLがなくなってからまだ3年しかたっておらず、その面影があちこちに残っていました。例えば鉄道の町として栄えた岩見沢の駅員のアナウンスは、まさに職人芸を感じさせるものでした。いつか廃線になった線も含め、もう一度北海道の線路をたどってみたいと思います」
(編集部・三島恵美子)
※AERA 2021年11月8日号