2009年5月、愛犬と一緒に御料牧場に向かう皇太子ご一家 (c)朝日新聞社
2009年5月、愛犬と一緒に御料牧場に向かう皇太子ご一家 (c)朝日新聞社

「昭和の時代はフィルムでの撮影で、音声はありませんでした。平成に入りビデオが導入され、カメラマイクで肉声が拾えるようになった。明瞭とは言えないので私たちの番組でも必ずテロップは必要になりますが、録れた音声は紹介もしています」

 皇族の肉声が聞こえない。そう「感じる理由」があるのでは、と堀さんは言う。コロナ禍で皇族のお出ましの機会が少ないこと。その影響で番組で使う映像にも音声抜きの公式映像を使いがちなこと。若い皇族が成長し、子どもの時のように大声を出すことがなくカメラマイクで音が拾いにくいこと、などだ。

悠仁さまにしても、15年の夏休みに山形県を訪れた際、太鼓を体験された秋篠宮さまに『違うよ、そうじゃないよ』と話される声がメディアで流れるなど、ないわけではない。私たちがいまの上皇さまや陛下の子どもの頃のお声を聞いたことがないのに比べれば、今の方が肉声は聞けている、とも言えます」

 皇室ジャーナリストで元宮内庁職員の山下晋司さんも、宮内庁「発」以外のメディア映像の音声について、宮内庁の立場には昔から変化はないと話す。

「宮内庁が示す取材要領では、高性能の長いマイクを持ち込んで突きだしたりする取材は認めていませんが、テレビカメラのマイクが拾う音については、何の問題もないとしています。音声は一切だめ、という話は、私は聞いたことがありません」

 今回、宮内庁にも問い合わせたが、「皇室の行事などについては、その内容や性格を踏まえた上で、宮内庁において取材設定を行っており、必ずしも音声なしと設定しているものではありません」との回答だった。

 ただ、「カメラマイクが偶然拾った明瞭でない音なら、流してもOK」というだけでは、私たちが「皇族の肉声がない」と感じるのも無理からぬことではないか。山下さんもこう認める。

「ただ笑顔の映像を見せるのではなく、声の質や話し方を含めて国民が接することができれば、より親しみが増すとは思います」

皇室取材で「できること」は時代とともに広がってきているのは事実だ。次は何について広げるかというと「間違いなく音声だろう」と、山下さんは話す。(編集部・小長光哲郎)

AERA 2021年11月15日号より抜粋

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