2021年10月、30歳の誕生日に際して公開された赤坂御用地での眞子さんの写真(写真:宮内庁提供)
2021年10月、30歳の誕生日に際して公開された赤坂御用地での眞子さんの写真(写真:宮内庁提供)
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 皇族の肉声を聞く機会が減っている。かつてはワイドショーでも、よく聞くことができた。肉声が減少した背景には何があるのか。AERA 2021年11月15日号は、皇室映像の変遷をたどる。

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 柔らかな日差しの中、赤坂御用地を歩く眞子さん佳子さま。最後に眞子さんがはじけるような笑顔を見せる。

 眞子さん結婚直前の10月23日、30歳の誕生日に流され、私たちが何度も見た映像に音声はない。

 思えば、公式会見やおことば、園遊会を除けば、こういった公式映像にはいつも、皇族の「肉声」がない。なぜだろうか。

「『宮内庁発』の映像には、基本的に音声がありません」 

 こう話すのは歴史学者で名古屋大学大学院准教授の河西秀哉さんだ。そこにはある狙いがあると、河西さんは見る。

「ある種の権威性や神秘性を保ちたい、ということだと思います。象徴天皇制の下、時に親しみのある映像で国民まで『降りて』来つつ、一方で声を入れることでフラットな関係にまではならないよう、コントロールしている面があるのでは」

■「私」にカメラ入れた

 東海テレビプロデューサーの阿武野勝彦さんは、音声のない皇族映像について「映像表現に音声は不可分なものなのに、誰が、何の目的で音を切っているのでしょうか。その理由がわからないのが気持ち悪い」とした上で、「宮内庁に意図など、そもそもないのでは」と見る。

「理由が曖昧なまま何となく慣例的に流れることが多い日本社会らしいとも言えますが、メディアの側に意図があるなら明確にすべきだし、前例を踏襲しているだけだとしたら、今の時代には全く合わないと思います」

 1959年から皇室の姿を伝え続けている毎日放送「皇室アルバム」のチーフ・プロデューサー、堀素子さんもこう話す。

「宮内庁発のビデオ映像は宮内庁が嘱託カメラマンに撮影を依頼しますが、『フィルムで音声が入っていなかった時代の前例通りに』と、確たる理由はないと聞いています。ただ、公開が前提の公式映像ですから、音声を生かしたところで『自然な肉声』とは言えないと思います」

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