2009年2月、葉山御用邸近くの小磯の鼻を散策する天皇、皇后両陛下 (c)朝日新聞社
2009年2月、葉山御用邸近くの小磯の鼻を散策する天皇、皇后両陛下 (c)朝日新聞社

 自然な肉声と言えば、私たちは幼い眞子さんが海岸で「海蛇がいるよね、お父さま!」と声をあげるなどの映像は数多く目にする一方で、成長してからの眞子さんの肉声を聞く機会は極めて少なかった。会見後、「眞子さんの声がかわいい」などの声がネットにあふれたのもその証拠だろう。これはなぜなのか。河西さんは、「皇室と肉声」をめぐる変遷をこう解説する。

「幼少の眞子さんの肉声のイメージが強いのは、平成初期の皇室が、宮内庁『発』ではなく私的な部分に報道のカメラをあえて『入れて』、祖父母と若い夫婦とその初孫といった温かい家庭像で、より『開かれた皇室』のイメージを出す、という戦略に転じた面があると思います」

 国民の側もそんな皇室の姿を受け入れ、歓迎したことで、メディアもさらに積極的に取り上げていったと、河西さんは見る。

■ふつうの会話のお二人

 今見ると驚く過去の映像もある。2009年、当時の天皇、皇后両陛下(いまの上皇、上皇后)の成婚50年を機に制作された「NHKスペシャル 象徴天皇 素顔の記録」では、皇居・御所を散策し、池で見つけた川鵜を見ながら「(羽を)干しているのかしら」、「どうなのかしら」など「ふつうの会話」を交わすお二人の姿が放送された。

「その頃くらいまでは、ワイドショーなどでも肉声を『録らせる』ことがあったように思います。ただその後、現在に至るまで、皇室の肉声をメディアで聞くことは次第に減っていったかもしれません」

 なぜか。たとえば11年の東日本大震災で当時の天皇、皇后両陛下は何度も被災地を訪問するようになるが、それを機に、「家庭的な姿よりも、被災地訪問に代表される『公の姿』を国民に見せることを選択、方針転換した可能性も考えられる」と河西さんは話す。

■国民の親しみが増す

 一方で異なる見方もある。前出の堀さんは、平成に入って皇族の肉声が増えたのは、まず撮影機材の変化が理由だと話す。

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