衆院選は与党圧勝で幕を閉じた。ただ、自民は党重鎮の落選が相次ぎ、惨敗した立憲民主も枝野幸男代表の辞任表明で混乱が続く。永田町は世代交代の季節を迎え、そして、岸田文雄首相と安倍晋三元首相の権力闘争は新たなステージに入った。
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すべて計算通りのはずだった。自民党総裁選で国民の注目を集め、新首相の下で衆院選を実施。自民党は15議席減らしたものの、単独で国会を安定的に運営できる「絶対安定多数」の261議席を獲得した。岸田文雄首相の大きな“戦果”だ。
ところが、順風満帆な船出は、いきなり大きく揺らいだ。党幹事長に就任したばかりの甘利明衆院議員が小選挙区で落選し、役職を辞任したのだ。新政権では甘利氏の立ち上げた勉強会「さいこう日本」のメンバーらが要職で起用され、甘利氏は首相の「後見人」として権力の中枢に躍り出たかに見えたが、まさかの“三日天下”に終わった。
「甘利さんは、もともと幹事長就任には消極的だった。政治とカネの問題で爆弾を抱えているから、いつでも幹事長を辞めると腹をくくっていました。それでも、安倍晋三元首相や麻生太郎副総裁と適切な距離を保てる甘利さんは、岸田首相も頼りにしたい存在だったはずです」(自民党関係者)
甘利氏の退場で生じた権力の空白を誰が埋めるかをめぐり、水面下のバトルがすでに始まっている。その行方は、各派閥の再編と密接に関わる。
まず、党内最大派閥の細田派(清和会)。大島理森前衆院議長が政界を引退したことで、同派会長の細田博之元幹事長が次の議長に就任する見通し。議長は慣例で党を離れるため、会長の座が空席になってしまう。
そこで党内では、安倍氏に近い議員を中心に細田派を引き継いだ「安倍派」の立ち上げに期待する声が出ており、11月8日には、安倍氏が細田派次期会長に就任する見通しだと報じられた。総裁選で健闘した高市早苗政調会長も、後ろ盾である安倍氏の派閥復帰を歓迎しているという。